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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2009年8月14日

スポーツ界にあふれる無意味な数字

データはスポーツを観る者にとって欠かせない要素である。

選手の能力を測るだけでなく、一つの競技において、過去と現在を結ぶ唯一の手段であるともいえる。2004年に262安打を達成したイチローとジョージ・シスラーの記録がよい例である。

しかし、残念なことに、スポーツ界に広く普及しているデータには、選手の実力を正確に反映していないものが数多くある。むしろチームの経営や采配に悪影響を及ぼしている数字もあるくらいだ。

例えば野球の打点。三冠王のカテゴリーともなっているこの指標は、打者の能力以前に、ランナーがいるかいないかが大きく影響する。出塁率の高い打者や俊足ランナーを抱えるチームのクリーンナップが有利なのは明らか。

チー ムメイトの能力に左右されるという点では、得点(打者が本塁に帰還する回数)や投手の勝敗成績も同じだ。最優秀投手を選ぶ際、何勝を挙げたかということがよく引き合いに出される。しかし、10点許そうが、ヒットを20本与えようが、自チームが勝てば勝利投手というのではあまりに馬鹿げている。

そ して最悪なのはセーブ。チームが3点勝っている九回の場面にクローザーが登場し、2点を許してもセーブはつく。一回に2点を許すというのはピッチャーとし ては悪い内容である。打点や得点は、少なくともチームに貢献した結果だが、セーブはチームに悪影響を与えた選手がプラスの成績を得るという、とんでもないデータ なのだ。

セーブやクローザーという考えが普及した現在、ベンチの采配がそれらに支配されることすらある。最高のリリーフ投手を、九回表、3点差で勝っている場面では使うのに、セーブがつかないから七回に同点満塁の場面では使わないという のは、あまりにもったいない。勝敗の分け目となる最も重要な場面を抑えるというのが、本来の救援というものではないか。

現在守備力の指標として用いられているエラーや守備率は、守備範囲や肩の強さを一切考慮していないので、実用性はゼロに近い。打率、安打数、防御率といった数値でさえ、他のデータと合わせて考慮しないと、判断を誤ることもあるので注意が必要だ。

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