自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2012年11月8日

大統領選挙の運命を決めた「少数派」

統計ギークたちの予想通り、オハイオ州を獲得したオバマ大統領が再選を果たした。(まだ結果の出ていないフロリダ州でオバマ氏が勝てば、全50州でネイト・シルバー氏の予測が的中したことになる。)

上院では民主党が議席を伸ばしたものの、下院では共和党が過半数以上を維持したため、結果としてはねじれ議会の現状が維持された。オバマ大統領が、二期目にどれだけ議会の協力を得られるかに注目が集まる。

今回の米大統領選挙で感じたのが、選挙人口構成の変化である。2000年と2004年にブッシュ大統領を当選させる原動力となったのは、人口の20パーセントを占めるといわれる保守的キリスト教信者たち(Evangelical Christians)。2010年には、ティーパーティー運動が共和党の下院選挙での勝利に貢献した。

ところが今回の上院選では、共和党の予備選挙で勝利を収めた保守派候補たちが、本選で中道派の投票者に嫌われて、民主党候補に負けてしまうという事態が起こった。経済に関しては、小さな政府を目指す保守派政策が独立派に支持を得られても、中絶や同性愛といった社会問題に関する保守派の主張は、女性や若者から敬遠されてしまう。

それに対して民主党は、ヒスパニックや黒人といった少数派に加え、女性や若い有権者などから幅広い支持を受けた。オバマ陣営は、選挙終了ギリギリまで、投票率が低いと言われる人種マイノリティの多い地区に出向いて投票するように促し続けた。

テレビに映っていたロムニー氏の陣営本部が、お洒落な格好をした白人でいっぱいだったのに対し、オバマ大統領の本部は、多様な人種と年齢層の支持者が入り交じっていた。マイノリティの人口は増える一方だし、有権者の半分以上を占める女性から敬遠されたら話にならない。共和党は、今後いかに支持層を広げられるかが課題である。

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2012年11月7日

アメリカの将来を決める議員選挙

大統領選挙ばかりが注目されがちだが、今日は全米の地方選挙も行われた。

うちの新聞も、地元の下院・上院議員はもちろんのこと、郡の行政官、市議会議員、教育委員の選挙まで朝刊に載せるするため、報道局は締め切りギリギリまで粘って作業をしている。(ボクは朝のシフトを任されていたため、既に帰宅してのんびりとニュースを見ている。)

誰が次のアメリカ大統領になるかが、世界の動向に大きな影響を及ぼすのは間違いないが、それと同じくらい重要なのが連邦議会議員選挙である。


この四年間は、議会のこう着状態がアメリカに深い傷あとを残した。両党がお互いに一歩も譲らないことで、予算法案がなかなかまとまらず、米国債の格下げをまねいた。ティーパーティー運動やウォール街占拠運動で表面化したように、国内で右派と左派の両極化が進んでいるのが原因である。

大統領は議会の協力がなければ、選挙でかかげた公約はとても実現できない。大統領や他党議員と力を合わせて国を運営していくことのできる中道派議員が、どれだけ当選できるかが経済回復の大きなカギとなる。

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2012年11月6日

マネーボール旋風が政治に?


米大統領選挙が明日に迫った。世論調査や大手メディアの報道だけを追っていると、接戦だという印象を受けるが、統計学を使って独自の予測をしているギークたちの間では、オバマ大統領が優勢との見方でほぼ一致している。

最新の全米世論調査では、オバマ大統領とロムニー氏の差は1、2パーセントポイント程度。しかし、アメリカの大統領選挙は選挙人団制度を取り入れているため、各州で勝った候補が、その州の選挙人を全て獲得する。だから、総得票数で上回った候補が勝つとは限らない。

アメリカには50の州があるが、勝敗を決めるのは、民主党や共和党のどちらが勝ってもおかしくないswing states(揺れる州)と呼ばれる州である。今回はオハイオやウィスコンシン、ネバダ、アイオワなどの州が勝敗の鍵をにぎると言われている。

データギークたちは、数十もの世論調査の結果を総合して、それぞれの州で支持率の平均をはじきだす。それを過去の統計データと比較して、各候補の勝率を計算する。各世論調査ではほとんど差のないswing statesでも、サンプル数を増やすことで、より正確な確率が導き出せるとの考えだ。

選挙の統計的予測で有名なのが、ニューヨーク・タイムズに寄稿するネイト・シルバー氏。彼はセイバーメトリクスと呼ばれる野球の統計分析で名を馳せた後に、政治アナリストに転向した。2008年の大統領選挙では、50州中49州での勝者を的中させた。選挙前日の予想では、最も重要なオハイオ州で優勢なオバマ大統領が、90パーセント以上の確率で勝つという

前回の選挙では知る人ぞ知る統計的予測だったが、今回はメディアにも大きく取り上げられて、一般大衆からも注目を集めている。その注目度ゆえに、経験や”勘”を重んじる古参の政治アナリストたちからは、強烈な批判を浴びている。映画「マネーボール」を見た人は分かると思うが、セイバーメトリクスも10年ほど前にメジャーリーグで同じような扱いを受けた。

大統領選挙がメジャーリーグと違うのは、本番が4年に一度しか行われないこと。シルバー氏は必ずオバマ大統領が勝つと宣言しているのではない。オバマ大統領がロムニー氏に勝つ確率は、サイコロを振って1から5までの数字が出る確率と同じくらい。だからどっちかに金をかけろといわれたら、オバマさんにかけると言っているのである。もちろん6が出る確率も十分にある。

それでもシルバー氏の予想が外れたら、政治アナリストたちは待ってましたとばかりに、彼を叩くだろう。今回の選挙は両候補だけでなく、データギークたちにとっても命運を分ける戦いとなる。


ネイト・シルバー氏のインタビュー

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