自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2015年9月29日

法王はセレブ中のセレブ

アメリカを騒がせた6日間のお祭りがようやく終わりました。

初めて米国を訪問したローマ法王フランシスコがバチカンに帰国。自らがアメリカとの国交回復の仲介役を務めたキューバを訪れた後、ワシントンDC、ニューヨーク、フィラデルフィアで熱烈な歓迎を受けました。



テレビは生中継で法王の一挙手一投足を報じ、多くの新聞は関連ニュースを連日トップで扱っていました。セキュリティー体制はどうだとか、何を食べただとか、日本の皇室報道を彷彿とさせます。

安倍首相がおこなって日本で話題となった米上下両院合同会議でのスピーチ。今回は、その時とは比べものにならない地元メディアの取り上げぶりでした。



うちの新聞も、地元カトリック教徒の興奮ぶりや、法王に会いに東海岸に行くという人々を一ヶ月間程前から記事にし続けました。サン・ホワン・カピストラーノに伝道所を作った修道士フニペロ・セラが、フランシスコ法王によって聖人の地位にあげられたことも、オレンジカウンティでは話題になりました。

あまり海外の有名人に関心を示さないアメリカ人ですが、イギリス王室と法王は別格。セレブ大国アメリカで、最大級の歓迎を受けます。

米国では、プロテスタント教徒がほぼ人口の半分を占めますが、カトリック教徒も20パーセント以上。流入の続く中南米移民にもカトリック教徒が多いです。

ボストングローブ紙の調査報道がきっかけで明るみに出た性的虐待事件によって、米国のみならず世界中で評判を落としたカトリック教会。そんな負のイメージをくつがえそうとするフランシスは、まさにバチカンにとって救世主なのです。

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2015年9月24日

Rancho Mission Viejo: オレンジカウンティ最新の計画都市がオープン

ロサンゼルスの郊外として発達したオレンジカウンティ。過去60年ほどで、開発は郡の隅々にまで広がりました。

そんなオレンジカウンティで最新の計画都市が、郡の南に位置するランチョ・ミッション・ビエホ。サン・ホアン・カピストラーノの東にある丘陵地を切り開いて造成が進んでいます。最終的には、1万4000戸もの家やアパートが建てられる予定です。

オレンジカウンティで問題になっている、不動産価格の高騰と住宅不足を緩和するのではないかと期待されています。

ランチョ・ミッション・ビエホは、いくつかのヴィレッジで構成され、先週末に第2のコミュニティー、Esencia(エッセンシア)が一般向けにオープンしました。興味のある人は、モデルハウスをまわって家を予約することができます。


地図は開発業社であるRancho Mission Viejo Companyの位置新しいヴィレッジはその周りに広がっています

ビジターセンターに飾られているエッセンシアの完成図。
ぼくは取材担当地域ということで、開発業者に招待されて先行ツアーに参加。

まだ完成には遠いですが、舗装された道沿いに42のモデルハウスが立ち並んでいました。昨年訪れた時は、まだ未開発だった丘陵地が、わずか一年でここまで様変わりするのかとびっくりしました。エッセンシアは丘の斜面に造られているので、眺めのいい日には、ダナポイント沖の海がわずかながら見えます。

エッセンシアはランチョ・ミッション・ビエホの中でも特に高い位置にあるので、眺めがいいです。写真に写っているのは、開発業者の副社長。
家の値段は、50万ドル弱(6000万円)から120万ドル(1億4000万円)。フリーウェイや海から少し離れているので、南カウンティの新築としては低めの設定です。

ベッドルーム4つ、バスルーム5つで350平米と最も大きな物件を見せてもらいました。外から見るとそんなに大きくは感じませんが、二階を歩いていると迷子になりそうな作りでした。二階のバルコニーからは、180度景色が見渡せます。裏庭には、眺めのいいプールと、fire pit(薪ストーブ)を囲んでくつろげるスペースが。

豪邸に住みたいという願望はないんですが、見て回るのはなぜか心がウキウキします。

一階のリビング。いかにもアメリカの家といった感じ。
外にはプールと薪ストーブ。薪ストーブを囲んでくつろげるスペースの床には、数センチの水がたまるようになっていて、暑い日には涼しさを演出します。
ランチョ・ミッション・ビエホの各ヴィレッジには、住民が集うためのクラブハウスやカフェ、公園や散歩道、それに共同農場(community farm)などがあります。共同農場にお金を払って参加すれば、好きな時にだけ畑を耕すことができるそうです。収穫された野菜や果物は、参加者全員に均等に配分されるとのこと。

エッセンシアの共同農場。職員が常駐しているので、住民は好きな時だけ耕すことができる。
ランチョ・ミッション・ビエホを開発するRancho Mission Viejo Companyコミュニティーと会社の名前が一緒でややこしいがもともと南カウンティの大部分を牧場として所有していました郊外化の流れが押し寄せる中でただ空き地を売り渡すのではなく自らが開発に携わる道を選択これまでにミッションビエホランチョ・サンタ・マルガリータラデラランチといった計画都市を造ってきて今回が最後の大規模プロジェクトになります

開発担当者は、人々の嗜好の変化とともに、コミュニティーの形も変わってきていると言います。

これから大量に退職を迎えるベイビーブーマーたちは、これまでの中高年層と違って、自分たちを老人だとは考えません。マウンテンバイクといったアクティブスポーツを嗜み、若者と一緒に地ビールバーなどでナイトライフを楽しみます。55歳以上専用区域には、あえてゲートを作らなかったそうです。

日本では若い人の車離れが進んでいますが、アメリカでもそれは同じ。ランチョ・ミッション・ビエホには、ヴィレッジ同士をつなぐ自転車道があり、ゴルフカートで移動している人もいました。メルセデス社は、ランチョ・ミッション・ビエホと提携して、近隣のショッピングセンターにシャトルサービスを運行しています。

都会だけでなく、郊外の姿も変わってきているってことです。買うつもりがなくても、モデルハウスに足を運ぶと、アメリカの住宅事情がわかって面白いですよ。

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2015年9月21日

記者らしく夜も働いてみました

やはり土曜日のオフィスは、ひっそりとしている。

昨日から3ヶ月間の休日出勤が始まり、そう感じました。うちの報道局では、フルタイムの記者に、2年に一度くらい週末シフトが回ってきます。Breaking news(速報)かgeneral assignment(一般報道)かを選んで、土曜か日曜のいずれかに働きます。事件は毎日起こり、新聞も365日休みなく発行されるです。

僕は以前にも担当した、土曜夜の速報を選びました。

独身の時は何の苦にもならなかった、というより他の人が働いている平日に休みを取れる優越感にひたることができた週末シフト。でも、結婚してからは、奥さんと貴重な休みが合わないというのは不都合極まりないです。ちょっとした泊りがけの旅行などに行きづらくなります。ビール好きの奥さんを、各地のオクトーバーフェストに連れて行ってあげられないのが残念。

普段は200人近くが働く報道局オフィスですが、土曜日は数えるくらいしか出勤していません。報道記者はぼく一人。だだっ広いフロアに島型に並べれたデスクの一つを選んで、ポツンと座って作業します。新聞業界の将来を不吉に表さんとばかりに照明が暗いのが気になります。


僕の役目は基本的には電話番。3時間に一回くらいオレンジカウンティ各市の警察署と消防署に電話をかけて、事故や事件が起きていないかを確認します。大事件の際は、自宅待機している記者を現場に向かわせます。あとはツイッターやフェイスブック、交通機動隊の情報サイトをチェック。

この日は午後2時からシフトがスタートして、大事もなく夜を迎えました。Pacific Coast Highwayの交差点で信号が切れて渋滞、ラグナヒルズのガソリンスタンドで車から出火、高速57号で衝突事故といった小さな記事をレジスターのブログに載せました。

ところが9時過ぎになって、サンタアナで銃撃事件、コスタメサのコンビニで強盗が発生。グーグルマップで調べると、強盗事件が起きたのは、行きつけのラーメン山田屋の近くではないですか。電話越しに警察から話を聞いていると、あまりリアリティが湧かないのですが、よく知っている場所だと急に身近に感じるものです。

結局、定刻の11時をとうに過ぎてから帰路に着くことに。車の中で、明日は奥さんと山田屋にラーメンを食べに行こうと決めました。

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高速配送サービスのAmazon Prime Nowがオレンジカウンティに!

Googleファイバーのニュースに引き続き、家庭用品や電化製品などを1、2時間で届けてくれるアマゾンのサービスが、O.C.で利用できるようになりました。

Amazon Prime Nowは、昨年12月にマンハッタンで始まったプライム会員向けのサービス。数万ものあらかじめ指定された商品を、注文を受けてから2時間以内に無料で配達してくれます。1時間以内を希望する場合は7.99ドルかかります。

今回、アーバイン、アナハイム、サンタアナ、コスタメサ、ニューポートビーチとオレンジを含むロサンゼルス都市圏でサービスが開始されました。車がないと買い物にも行けないこの地域には、まさに朗報です。

さっそく専用のアプリをダウンロードして、ZIPコードを入れてみたら、ちゃんと利用できると表示されました。残念ながら、アーバインでは1時間配送はやっていないようです。

我が家はプライム会員ではないので、実際に注文することはできません。でもテレビや映画が見放題、しかも音楽も電子書籍も無料な上に高速配達までついてくるとなれば、99ドルはあまりに安い。Apple TVやNetflixを使っていなければ、今すぐにでも契約するでしょう。

国土の広いアメリカには、日本の宅急便のような細かな流通網はありません。それをアマゾンは変えようとしているのです。

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2015年9月19日

Googleファイバーがアーバインにやってくる!?

アーバイン市民に朗報です。Google社が、独自の超高速インターネット回線を提供するエリアの候補として、アーバインを選んだと発表。実現すれば、南カリフォルニアで初めての街となります。

Google Fiberは1Gbpsと、通常のブロードバンド回線に比べて、およそ100倍のスピードがでるといいます。家庭用ルーターで、その速度をどこまで発揮できるかは分かりませんが、映画一本を数秒でダウンロードできるとのこと。ケーブルテレビを契約せず、Apple TVでNetflixやYouTubeをストリーミングしている我が家にとっては、のどから手が出るくらい欲しいサービスです。

値段はインターネット回線だけだと、月々70ドル。テレビサービスを加えると130ドルになります。

Googleファイバーは、3年前にカンザスシティーで始まり、テキサス州オースティンとユタ州プロボに進出。アトランタとテネシー州ナッシュビルでも工事中です。今回は、アーバインに加えて、サンディエゴとケンタッキー州ルイビルが選ばれました。

Googleのブログ記事によると、ターゲットにしているのは、起業文化に富み、テクノロジーの中核として成長中の街だといいます。

静かな郊外の街というイメージの強いアーバインですが、実はテック系企業がいくつもオフィスを構えています。スタートアップも多い。そこで働く、若くて裕福なyoung professionalsと呼ばれる人々が、この街には多く住んでいるのです。市の人口は、この5年間で18パーセント増えています。

Googleファイバーがやってくるというニュースで、これまであぐらをかいていたライバル会社たちも、焦ってインターネットサービスを改善させてくるはずです。アメリカは日本、特に東京に比べると、家庭用のインターネット回線が圧倒的に遅い。その割に料金が高いから腹立たしい。Googleファイバーが広まれば、それも一変するかもしれません。

我が家が使っているCox社は、すでにアーバインのアパートで、カリフォルニア初の住宅向け1Gbps回線を試験的に提供しています。年内にエリアを広げると、広報がうちの新聞に伝えています。

Googleファイバーの実現に向けた次のステップとして、市がGoogleが出す要望に応じなければなりません。工事の邪魔をせず、スムーズに認可しろというもの。これまでGoogleに選ばれた地域はどこも協力的で、Googleが最終オッケーを出すまでに、1年くらいかかったとレジスターは報じています。

期待は膨らみます。

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2015年9月16日

オレンジカウンティはビーチバレーのメッカなんです

学生の頃に、元バレーボール日本代表である西村晃一さんの特集をテレビで見たのを今でも覚えています。175センチとバレーボール選手としては小柄ながら、日本人トップレベルの身体能力を持つ。凄まじい瞬発力と肉体でした。

その西村さんの試合を、10年以上たって生で見ることができました。西村さんはハンティングトンビーチで開かれた、AVP Championshipsという世界最高峰のビーチバレーの大会に出場。42歳ながら9位という結果を残しました。

やってみると分かるのですが、砂の上でジャンプするのは、想像以上に難しい。それでも西村さんは2メートルほどの選手を相手に、鋭いスパイクを打ち込んでいました。生き生きとした表情としまった体は、年齢を感じさせません。



O.C.はロサンゼルスと並んで、ビーチバレーのメッカです。ビーチに行くと、老若男女が水着姿で2対2のゲームを楽しんでいます。腹の出たおっちゃんでも軽快に動いているからびっくりです。ちなみに、選手として日本でも人気があったカーチ・キライは、サンクレメンテの住民とのこと。

動きの激しいビーチバレーですが、トップ選手のリストを見ていると、その多くがアスリートとしては高齢な30歳半ば以上だと気づきます。体力以上に、頭と経験がものをいうスポーツだということでしょう。

ハンティングトンビーチ大会では、男子で優勝したペアの一人ジョン・ハイデンは43歳でした。決勝で対戦したペアも、二人とも30歳以上。

そのうちの一人、ライアン・ドアティーはなんと元プロ野球選手。身長215センチの左腕が、ルームメイトと遊びでバレーボールを始めたのは、マイナーリーグをクビになった後だそうです。2012年からAVPツアーに参加し、現在のランクは3位。アメリカという国は、こういう怪物を生む土壌があるのです。

彼らをみていると、今からでも遅くないのだと、元気をもらえます。

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2015年9月14日

薄らぎゆく9・11

多くの日本人が、2011年3月11日に何をしていたかを覚えているように、アメリカ人にとってもそういう日があります。

日本軍による真珠湾攻撃。ケネディ大統領暗殺。そして、2001年の同時多発テロ。

テロ事件以降、9月11日はPatriot Day (愛国の日)に指定されています。星条旗は反旗の位置に下ろされ、世界貿易センターに第一機が突入した東海岸午前8時46分には、犠牲者のために黙祷が捧げられます。今年も、オレンジカウンティのあちこちで、被害者を弔い、救助に当たった消防士や警察官、対テロ戦争に従事した軍人を讃える集会が開かれました。

僕は、担当地域のランチョサンタマルガリータ市が催したセレモニーを取材。地元のボーイスカウトとその家族を中心に、数百人が街の公園に集まりました。

現役軍人や市長がスピーチをし、9・11や対テロ戦争の犠牲になった住民の名が読みあげられました。感極まって涙を流す参加者も。

そんな中、僕の印象に残ったのは、厳かな式の最中に聞こえてきた歓声。公園内にあるフットサル場で試合が行われていました。

9・11ほどの事件でも、時が経てば人々の記憶とともに薄らいでゆくものです。今の高校生や大学生には、14年前の事件を覚えていない者も多いはず。小・中学生などは生まれてすらいなかった。

現実はいずれ歴史になります。

それでも9・11のセレモニーに参加していると、空港のセキュリティーは緩く、大都市でもテロに怯えることがなかった時代を思い出します。あの日以前の世界があったことを再確認させてくれるのです。

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