自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2012年5月29日

最高に楽しいプロポーズ

大学時代の友だちの結婚式に出席して以来、R&BデュオのK-Ci & JoJoが歌う、「All My Life」という曲にはまっている。アニメ好きのオタクでひ弱だが、最高に優しい新郎が、運命の女性と、この曲でファーストダンスを踊っているのを見て、思わずひたってしまった。



前にも書いたが、こっちのカップルは、プロポーズの様子をおおぴっらにする。人目をはばからず、ストレートに感情を表現するアメリカ人のプロポーズには、他人が見ても感動したり、楽しくなったりするようなものがある。

最近、YouTubeで話題になっているのが、次の動画。プロポーズを受ける女性が乗った車がゆっくりと移動し、60人以上もの家族や友だちが、道ばたでダンスを踊る。女性が着けているヘッドフォンに流れている音楽は、ブルーノ・マーズの「Marry You」で、君と結婚したいというフレーズが、プロポーズにぴったり。投稿から三日間で既に500万回も再生されている。



同じコンセプトで、一世を風靡したのが下の動画。これはプロポーズではなく結婚式だが、新郎と新婦の入場を、クリス・ブラウンの「Forever」に合わせてダンスで行う。



テレビ番組も、この流れに便乗。大切な人にフラッシュモブで思いを伝えようというのが、「Mobbed」というリアリティ番組。初回の放送では、ロサンゼルス近郊のショッピングモールを占拠して、大掛かりなプロポーズを演出した。



単に格好つけるのではなく、仲間と一緒に楽しくというのも、ロマンチックである。

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2012年5月28日

ビクタービル戦争最前線


メモリアルデーの週末に、ビクタービルで行われている、北米最大規模のエアソフトガン大会を取材してきた。ライオンクロー作戦シリーズという団体が主催する戦争シミュレーションゲームで、世界中から800人近くの愛好者が集まっている。



戦争シミュレーションゲームを見たのは初めてだが、あまりの凝り方に驚いた。

20年前に閉鎖された、ジョージ空軍基地の住宅地区を貸し切り、無惨に荒らされた160以上もの建物が、市街戦の雰囲気を生んでいる。イラク戦争が真っ最中の頃は、実際に米軍が、同施設を使って訓練を行っていたという。

戦闘服に身を包んだ数百人の参加者が、軍用トラックの荷台に積み込まれて輸送される光景は、本当の軍事訓練にしか見えない。装備にも惜しみなく金をかけており、ほとんどの者がナイフや手榴弾を身につけ、エアソフトなのに、なぜかバズーカを担いでいる兵士も。



アメリカだけあって、参加者の10パーセント程は、現役か退役軍人で、警官も多いらしい。通りには、エアガンを搭載した軍用ジープが行き交い、はてには装甲車までが走っていた。



VIPとして、映画「ブラックホーク・ダウン」に描かれる、モガディシュの戦闘を経験した、ダニー・マクナイト中佐が参加。見た目は単なる痩せたおっちゃんである。

マクナイト中佐

しかし、モガディシュの戦闘では、最も被害の大きかった車輛舞台の指揮官を務め、映画の中では、弾丸の飛び交う市街地を、装甲車に乗って駆け抜けていた。中佐曰く、モガディシュは28年間の軍歴で最もタフなミッションだったそうだ。

「でも悪い日だったとは言わない。兵士たちがやるべきことをやった。我々は最高の仕事をした。犠牲者が10倍でもおかしくはないくらい、難しい仕事だった」という。

そんな中佐に指揮される参加者たちの中には、どう見ても運動不足で、戦場では足手まといにしかならないような太った者、痩せた者たちが、ちらほら見られた。普段はテレビゲームに熱中するオタクも多いらしく、スタッフとして戦闘に参加している、かわいいモデルさんたちと、笑顔で写真など撮っていた。中佐は運動不足の若者が動くのはいいことなどと優しさを見せていたが、これがモガディシュだったら、きっとしばいていたに違いない。



残りの写真はFacebookで。

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2012年5月24日

読者は暇じゃない

経費削減にともない、この4年間で、うちの新聞はどんどん紙面のスペースが削られてきた。記者の数も減ってきているので、何日もかけて長い記事を一本書くより、一日に数本の短い記事を書くことが求められる。数千単語をかけて説明しなければ、面白さや問題の複雑さが伝わらないトピックもあるので、十分な取材時間と紙面スペースがないことに、もどかしさを感じることも多い。

その一方で、伝えたいメッセージを簡潔にまとめる訓練にはなっている。専門家ではなく、一般の読者にとって必要な情報は何か、言いたいことをどうしたら最も少ない単語数で表現できるかということを、常に意識するようになった。

これは、優れた文章の基本でもある。コミュニケーションは、メッセージを受け取る側を思いやることから始まる。特に新聞の読者は、暇ではない。毎朝、仕事に出かける前の数十分を使って、自分の興味ある情報を素早く収集できなければ、読者は離れていってしまう。だから新聞記事を書く基本は、一番大切な情報を最初に持ってくることである。凝った書き出しは、とっておきの記事のためにとっておく。

インターネットのメディアやブログは、新聞や雑誌のようなスペースの制限はないが、冗長な文章を読みたいなどとは誰も思わない。意味がちゃんと伝わるのであれば、10字よりも1字、10行よりも1行、10ページより1ページの方がいいに決まっている。読み手が時間を無駄にしないようにという優しさが、ジャーナリストには必要だろう。

これと反対なのが、大学教育だ。ほとんどの課題は、論文やエッセイを何ページ以上という出され方で、長く書いた人が偉いのである。だから学生は必死になって、同じ表現を何度も繰り返したり、余計な修飾語を駆使したりして、無理に文章を長くしようとする。ボクの大学では、卒業論文が必須だったが、内容はともかく、100ページや200ページの長編を書いた学生が英雄扱いされていた。論文も簡潔にというのが基本なのだから、何ページ以上という課題の出し方を、やめるべきではないか。

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2012年5月23日

アメリカで髪を切ろう

昼休みを使って、行きつけの店で散髪してきた。あまり治安のよくないストリップモールに入っている理容室で、一年以上前に8ドル(630円)という安さにひかれて入って以来、常連になっている。入ってくる男性客に、「Hello, handsome!(色男さん、いらっしゃい!)」といつも声をかける、フランス人のエリザベスという中年女性がオーナーだ。自分にだけ言ってくれているのかと勘違いして、気を良くしていた頃が懐かしい。ボクが行くたびに、やたらに日本人の気質を褒める一方、アメリカ人に対しては、怠け者だと厳しい意見を放つ。

治安が悪いので、表示されているより早く店がしまってしまう。
今日はなぜか、日本語の書かれた散髪ケープを使っていたエリザベス。

こっちに住んでいる若い日本人は、現地の理容室や美容院をほとんど利用しない。自分で切るか、上手な友だちに頼んだり、わざわざ日本人向けに商売をしている店に出向いたりする人が多い。アメリカ人は下手だと決めつける人もいるが、日本とアメリカで流行の髪型が違うといった方が正しいだろう。女性が髪型を気にするのは、両国ともさして変わらないが、日本人男性に比べると、アメリカ人男性は髪型に気を使わない。日本の空港に着いて、トイレの中で鏡を見ながら髪をいじっている男性を見ると、日本に帰ってきたという気持ちがこみ上げてくる。日本で流行している男性の髪型の多くは、こっちの主流文化では、なよなよしいと受け取られる。

郷に入れば郷に従えがモットーの自分は、こっちでも構わずそこらにある理容師を試してきた。エリザベスの人柄と親切さが気に入ってからは、1ヶ月に一回ほど通って、髪型はだいたい彼女におまかせしている。前回のスタイルが気に入ったので、今日はそれと同じにしてくれと頼んだら、彼女は忘れてしまったのか、思い切り短くされてしまった。まるで中学の野球部員である。途中で指摘しようかとも思ったが、「もうすぐ夏だし、いいや」と諦めた。髪のラインを丁寧に剃ってくれたのはいいが、土曜日のマッドランで顔が日焼けしていたので、剃られた部分だけが白くなっていて、まるでカツラをかぶっているかのように見える。これも愛嬌だ。

ただし、髪型を変えるたびに、「その髪型、好きだよ」と声をかけてくれる同僚のゲイのおじさんが、今回は「髪型変わったねえ」としか言わなかったので、少しだけ落ち込んだ。

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2012年5月22日

アメリカならではのマッドラン

先週末は、サンバーナディーノ郡保安官事務局主催のマッドラン(泥沼走)に参加してきた。泥沼がいくつも配置された5キロのコースは、普段は新人警官の養成に使われる施設だけあって、巨大な丘があったりと、かなり本格的なつくりだった。

スタート前の演出も凝っていて、催涙ガスの煙の中にヘリコプターが着陸し、黒いユニフォームに身を包んだSWAT隊員が、ライフルを構えながら降り立った。まるで映画のワンシーンだ。日頃からウェイトトレーニングに励むアメリカの警官はガタイがいい。ボクは普段、彼らの気に入らないような記事を書くこともあるが、あの体格で制服を着られると確かに格好いい。

スタートと同時に巨大な爆発が起こり、参加者たちは歓声をあげながら走り出した。中にはスーツづくめの男性や、ハロウィーンにありがちなミツバチの衣装をまとった女性集団などもいた。

詳しい様子は、参加者たちが撮影したビデオを見てもらうといい。



2ヶ月ほど前にも、ウォーリアーダッシュという障害物走に参加したが、起伏が激しくて泥沼だらけの今回のコースの方が、体力的にはハードだった。前回は頭にカメラをつけて、一緒に参加した仲間をビデオ撮影しながらの完走だったが、今回は運動不足の体にむち打って真剣に走った。

 3月のウォーリアーダッシュにて



泥沼が深くなっているところがあって、足が抜けずに何度も顔からダイブしそうになったが、何とか49分でフィニッシュ。泥だらけの体と服を強力な屋外シャワーで洗い流したが、靴は泥が染み付きすぎて、やむなくリサイクル箱に捨てて帰った。

一緒に参加した仲間と、ゴール後の記念撮影
メインレースの後には、子ども用のレースが行われた。距離は1キロと短いながらも、ラフなミニ四駆のコースを彷彿させた。運動好きの子どもなら、忘れられない経験になるはず。

キッズレース
危険だとか汚れるだとかいう細かいことを気にせず、はしゃいでストレス発散できる機会の多いのも、この国の魅力である。

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2012年5月19日

メヒコバンザイ


冗談ではなく、ボクが米国留学を決めた理由の一つがメキシコ料理である。小学生の時に食べた、タコベルのタコスとファヒータ(どちらも厳密にはメキシコ料理ではないが)の味が忘れられず、いつかまた腹一杯、好きな時に食べたいと、小さな野心を抱いていた。

テネシー州での大学院生活では、一週間に一度はタコベルのタコスを10個くらい買って、一人で平らげていた。テネシーでは純粋なメキシコ料理ではなく、テクス・メクスというメキシコ風のアメリカ料理を食べることが多かったが、メキシコ系移民の多いカリフォルニア州に来てからは、本場の料理を堪能している。

恥ずかしながら、ヒスパニックが人口の半分を占めるビクタービルに4年ほど住んでも、スペイン語はほぼゼロのままだが、そんなことは気にせず、英語の話せない移民の集う小さなレストランや、近所のメキシコ系スーパーに通い詰めている。買い物くらいなら、身振り手振りで何とかなるものだし、得体の知れない食べ物を指差して注文するのも、それはそれで楽しい。お気に入りは、スーパーに置いてあるセビチェという魚介類のマリネで、しょっぱさと酸っぱさのバランスが癖になり、トルティーヤやチップスだけでなく、ご飯にも合う。

近所のメキシコ系スーパー

セビチェ

あまり知られていないが、メキシコの菓子パンやケーキには、日本で売られているのに近いものが結構ある。初めてメキシコ系スーパーに行った時、メロンパンらしきものが並んでいるのを見て感激した。パンが少しパサついているのは、文化の差だと思えば何のことはない。アメリカのスーパーで売っている大味なケーキがだめという人は、ぜひメキシコ系スーパーを試してみるべきだ。

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2012年5月15日

Facebookが切り開く、新コミュニケーション


今日は、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグの28歳の誕生日。Facebookは、金曜日にナスダック証券取引所に上場する予定で、時価総額は1000億ドル(約8兆円)にも達すると言われ、ザッカーバーグの総資産額は180億ドル(約1.4兆円)ということになる。

ボクは、Facebookができて間もない2004年にアカウントを作ったのだが、つい数年前まで、積極的には利用してこなかった。クラスで仲良くなった学生や、旅先で知り合った人と気軽につながりを保てるのは魅力だったが、いかんせんインターフェースの使い勝手が悪く、シンプルなデザインで日記機能が充実したmixiとは対照的だった。

それでもソーシャルメディアは、最後にはユーザー数がモノを言う。当初は、名門大学の学生のみに限られていたFacebookだが、徐々に門戸が開かれ、今や9億人のユーザーを抱える世界最大のソーシャルメディアとなった。日経ビジネスで身売りが報じられたmixiは、会社とユーザーがプライバシーの保護を意識しすぎた結果、ソーシャルメディアの醍醐味である「人とのつながり」が薄れてしまった。

今やアメリカ人にとって、フェースブックはインターネットそのものになりつつある。子どもから大人まで、パソコンやスマートフォンをつけるなり、まずはFacebookを開く。新聞やテレビではなく、Facebookに流れる記事や動画で話題を追い、家族や友だちの近況も、電話などかけずに、つぶやきや写真の一覧でチェック。友だちが結婚すれば、そこに参加する人たちがスマートフォンで写真を掲載するので、すぐにお祝いの言葉をかけられる。子どもや若い人は、Eメールを使わず、Facebookのメッセージ機能でコミュニケーションをとるようになっている。

他のサイトに行っても、Facebookのアカウントを持っていないと、利用できないサービスが増えてきている。例えば、うちの新聞のホームページでは、記事にコメントを投稿するのに、まずはFacebookにログインしなくてはならない。おかげで、匿名での誹謗中傷コメントは劇的に減った。Facebookのアカウントは、ネット上での身分証明になりつつある。

まだまだ使いづらい点の多いFacebookだが、機能だけ見ればより洗練されているグーグルのGoogle+が追いつけないのは、圧倒的なユーザー数の差があるからだろう。たとえGoogle+が機能を充実させても、Facebookはそれを真似ればいいだけ。長距離走で、周回遅れで走るグーグルの真後ろにくっついて走っているようなものである。

日本人ユーザーが増えてきたFacebookでは、自分の書き込みや写真に対して、アメリカ人と日本人の友だちが、異なる言語でコメントを残すことがある。こっちでの同僚や大学院時代の友人と、日本に住む大学・高校時代の同級生が、一つの場に集まってコミュニケーションをとっている光景は、インターネットのない時代を思い出すと、今でも不思議に感じる。

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