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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2011年9月19日

記者の教える英字新聞の読み方

これまで多くの英語学習者に会ってきたが、英字新聞を読んでいるという日本人は少ない。

新聞は時事ネタの宝庫であり、ネイティブの使う表現が学べ、さらにはその国に住む人々の視点や価値観に触れることができる。しかも、アメリカの新聞社の多くは、インターネットに無料で記事を掲載しているため、英語の勉強に活用しないのはもったいない。

英字新聞や雑誌の記事は、子供から大人まで広く読んでもらえるよう、シンプルな口語表現で書かれているのだが、教科書で英語を学んだ日本人にとって、ネイティブの使う口語表現というのはむしろ理解しづらい。

だが、英語の論文と同じように、新聞記事にも形式が存在する。今回は実際に英字新聞の記者として働く者の視点から、英文記事の形式を解説し、読み方のコツを伝授する。

新聞というのは、朝の限られた時間や、ちょとしたスケジュールの合間に読まれることが多い。読者の大半は、一つ一つの記事を精読するのではなく、全体を流し読みする。そのため、書き手としては、見出しと書き出しで読み手を釘付けにすることに重点を置く。入りが肝心なのだ。

英語では、新聞記事の最初の1〜3段落をリード(leadもしくはlede)と呼び、大きく分けて次の二つの書き方がある。

1)要約リード
これは「誰が、どこで、いつ、何をした」のかという、記事の最も重要なポイントを、最初のセンテンス、もしくは数行で要約してしまう方法。最新の事件や、ニュース自体にインパクトのある記事で多く使われる。

次の文は、"Obama plan to cut deficit will trim spending by $3 trillion"(「オバマの赤字対策プラン、支出を3兆ドル削減」)という見出しのニューヨークタイムズ紙の記事の書き出しである。
WASHINGTON — President Obama will unveil a deficit-reduction plan on Monday that uses entitlement cuts, tax increases and war savings to reduce government spending by more than $3 trillion over the next 10 years, administration officials said.
見出しだけでも記事の内容は見当がつくが、リードを読めば、オバマ大統領が月曜日に赤字対策プランを発表し、社会保障の削減と増税、戦費の節約などによって、向こう10年間で3兆ドルの支出削減をするつもりであることが分かる。

この後で、プランの詳しい内容や、赤字問題の背景などが説明されることは、容易に想像がつく。時間のない人や、トピックに興味のない人は、次の記事に移ればよい。

2)具体例リード
いきなりネタばらしをするのではなく、ニュースの本質に関係した具体的エピソードから入る方法。特集記事や社会問題を取り扱うような記事で用いられる。読者の共感を誘ったり、「うーん、これは一体何のことだ」と興味を誘ったりして、続きを読ませる狙いがある。スペースに余裕のある雑誌記事でも、具体例リードが多く使われる。

次の文は、ボクが最近書いた、"Children battle growing waistline"(「ふくれるウエストに苦しむ子どもたち」)という記事の書き出しである。
Victor Garduno ate late at night and drank almost a gallon of soda every day with almost no exercise while growing up. 
When he reached 270 pounds at 17 years old, Garduno made a decision. 
“I was always a big kid,” Garduno said. “I just decided to change it because I was tired of people picking on me at school and everywhere.” 
Completely altering his lifestyle, Garduno lost 130 pounds in 10 months. His cousins, who hadn’t seen him in a few years, didn’t recognize him. He’s now 20 years old and weighs 150 pounds at 5 feet 10 inches tall. 
But Garduno’s success story may be an exception. Today, nearly one in three American children are overweight or obese. The prevalence of children who are obese has doubled over the past 20 years, while the number of obese adolescents has tripled, according to American Academy of Pediatrics.
ビクターという高校生は、ほとんど運動をせず、夜遅くに食事をして、毎日4リットル近くのソーダを飲んで育ったため、17歳で体重が120キロを超えてしまった。学校でいじめられるのが嫌で、ある日ダイエットを決意し、なんと10ヶ月で60キロの減量に成功。

これだけでもすごい話なのだが、第5段落で話題は、ビクターではなく、子どもの3人に一人が肥満であるという社会問題へと移っている。導入部分は、インパクトのあるエピソードで、読者の興味をひきつけるのが目的だ。

そして具体例リードの直後には、通常、「どうしてこの記事を読む必要があるのか」を説明するナットグラフ(nut graph)という段落が続く。ここでは第5段落がナットグラフにあたる。

要約リードは一目で重要なポイントが分かるが、具体例リードを用いる記事では、ナットグラフを見つけられるかがカギとなる。ナットグラフを理解できてしまえば、残りの解説部分も意味を推測しやすくなるからだ。

英字新聞を読む際は、見出しと導入部分に目をやって、まずは要約リードなのか具体例リードなのかを判断。具体例リードならば、ナットグラフを探すという訓練をするとよい。

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2 件のコメント:

  1. 通りかかりのものです。
    2ヶ月前にカリフォルニアから帰国しました。
    日本に帰って来てからアメリカのニュースが気になるようになり、もっと英字新聞を読んでおけばよかったなあ~と思いました。

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  2. 英字新聞はインターネットでも読めるので、機会があればぜひ。

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