自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2010年5月17日

結婚は醜い?

家庭裁判所では人間の最も醜い部分を目にする羽目になる。
刑事裁判というと、殺人やら強盗やら物騒なイメージがあるが、裁判自体は厳粛な雰囲気の中、淡々と証人の尋問や検察と弁護人のやりとり等が行われる。

しかし家庭裁判所はそうはいかない。法廷内に一歩踏み入れると、そこはまるで紛争地域である。離婚率50パーセントの米国では、離婚調停や子供の養育権争いが絶えない。

聴聞が始まるやいなや、判事の前で弁護士同士が怒鳴り合いを繰り広げる。やれ父親が息子のサッカーの試合に遅れただの、母親は男にだらしないなどと、とりあえず思いつかんばかりの悪口を並べる。後ろに座って聞いているだけで、胸くそが悪くなる。ある弁護士いわく、「家庭裁判所は嘘のつき合い」だそうだ。

離婚だけならまだしも、そこに財産や子供の問題、家庭内暴力などが絡んでくると、争いは更にヒートアップする。どっちが正しいことを言っているかを判断するのはあまりに困難なので、記者としても家庭裁判所は基本的にノータッチ。

しかし、ある家庭裁判所に関する事件を取り上げたのをきっかけに、自分たちの裁判もとりあげてくれという問い合わせがひっきりなしにやってくる。当初は黙って話を聞いていたが、そのほとんどが不満や文句ををぶつけてくるだけなので、さすがに嫌気がさしてきた。新聞は夫婦げんかにかまっているほど暇ではない。

数年前には、生涯連れ添うことを誓い合ったはずの二人が、法廷という公の場で相手をおとしめ合う光景は見るに絶えない。日々それを目の当たりにしていると、自分の結婚に関しても慎重になってしまう。

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2010年5月16日

日本語を使いたくなったので

報道に移って3ヶ月。裁判所での取材にも慣れてきて、気持ちに余裕ができてた。休日も仕事の心配ばかりしていた頃が遠い昔のことのようだ。

毎朝、裁判所に顔を出して審理を取材。ビクタービルの急激な人口増加に裁判所の大きさが追いつかないため、朝の混み具合はまるで動物園である。

職員とはほぼ顔見知りになり、日々の積み重ねがようやく実を結んだのか、検察官や弁護士たちもようやく口を開いてくれるようになってきた。相手の信頼を裏切らないため、事実確認には特に気を遣ってきたつもり。

ビクタービルのような小さなコミュニティでは、同世代でつるめる仲間を見つけるのは難しい。その点、弁護士たちは話の合う貴重な存在。優秀で理想に燃えている人との出会いはやはり刺激になる。

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