刑事裁判というと、殺人やら強盗やら物騒なイメージがあるが、裁判自体は厳粛な雰囲気の中、淡々と証人の尋問や検察と弁護人のやりとり等が行われる。
しかし家庭裁判所はそうはいかない。法廷内に一歩踏み入れると、そこはまるで紛争地域である。離婚率50パーセントの米国では、離婚調停や子供の養育権争いが絶えない。
聴聞が始まるやいなや、判事の前で弁護士同士が怒鳴り合いを繰り広げる。やれ父親が息子のサッカーの試合に遅れただの、母親は男にだらしないなどと、とりあえず思いつかんばかりの悪口を並べる。後ろに座って聞いているだけで、胸くそが悪くなる。ある弁護士いわく、「家庭裁判所は嘘のつき合い」だそうだ。
離婚だけならまだしも、そこに財産や子供の問題、家庭内暴力などが絡んでくると、争いは更にヒートアップする。どっちが正しいことを言っているかを判断するのはあまりに困難なので、記者としても家庭裁判所は基本的にノータッチ。
しかし、ある家庭裁判所に関する事件を取り上げたのをきっかけに、自分たちの裁判もとりあげてくれという問い合わせがひっきりなしにやってくる。当初は黙って話を聞いていたが、そのほとんどが不満や文句ををぶつけてくるだけなので、さすがに嫌気がさしてきた。新聞は夫婦げんかにかまっているほど暇ではない。
数年前には、生涯連れ添うことを誓い合ったはずの二人が、法廷という公の場で相手をおとしめ合う光景は見るに絶えない。日々それを目の当たりにしていると、自分の結婚に関しても慎重になってしまう。