デモのきっかけは、イスラム教の預言者ムハンマドを揶揄したYouTube映像。リビアでは、武装集団がアメリカ領事館を襲撃し、大使を含む四人を殺害した。米国内の世論は、こうしたデモに軍事介入で対抗しようとする強硬論と、協調路線を貫こうとする和平論とにわかれている。
11月に行われる米大統領選挙では、これまで国内経済が主な争点だったが、両候補とも今後の外交政策を軽視できない状況となった。当然ながら、ロムニー共和党候補や保守陣営は、オバマ大統領の軟弱な外交姿勢が、リビアでの襲撃事件につながったと批判している。
しかし、多くの専門家は、両候補の打ち出す外交政策に大きな差はないと見ている。リベラル派の中には、オバマ大統領の軍事活動が強硬すぎると懸念する者すらいる。
クリントン米国務長官は、問題となったYouTubeの映像を「不愉快で非難されるべき」と批判しながらも、表現の自由を侵害するわけにはいかないと述べた。アメリカ社会の根幹にあるこの理念を、中東でデモを行う過激派に理解してもらうのは難しい。文化や価値観の違いが、問題をより複雑にしている。