オレンジ・カウンティ・レジスター本社の廊下を歩いていると、新しく雇われた社員の顔写真が目に飛び込んでくる。久しぶりに本社に立ち寄ったら、僕の写真もちゃんと貼られていた。
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レジスター報道局の廊下に張り出された新社員の写真。最初は中央の額の中だけだったのが、増えすぎてしまったのだという。 |
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僕の写真は、目立つ角に貼られていた。坊主にした直後に撮られてしまったので、余計に若く見える。 |
親会社が多額の借金と不況のあおりを受けて破産したレジスターは、昨年の7月に39歳の投資家、アーロン・クシュナー氏に買収された。グリーティングカードのビジネスで財を築いたクシュナー氏は、新聞業界の常識をくつがえす戦略で、レジスターの復興に取り組んでいる。
その一つが報道、つまりは製品への投資だ。レジスターはこの一年未満で、報道局だけでなんと100人以上もの記者やカメラマン、デザイナーを雇い、
業界で注目を浴びている。
新聞離れは、何もインターネットの普及だけが原因ではない。市民のニーズに応えるようなコンテツを提供してこなかったジャーナリスト側にも問題がある。それに加えて記者の削減は、新聞の質の低下を招いた。一時は380人に達したレジスターの報道局も、10年間で180人にまで減った。これでは購読者を失っても仕方がない。
他では得られない質の高い情報を提供すれば、読者はお金を払ってくれるというシンプルな発想に基づいて、今のレジスターは運営されている。ジャーナリズムにお金をかけてくれる新聞で働きたいと、レジスターには全米から記者たちが集まるようになった。
他紙の記者と話をすると、レジスターが膨れ上がった人件費を補うだけの収入を得られるのかという疑問の声を耳にすることも多い。でも彼らも、ジャーナリストとしては、僕らの取り組みが成功してほしいと心の底では願っているようだ。