自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2009年10月29日

Kindleは読書の未来

Left_hand(Courtesy of Amazon)

日本でも発売となったAmazon社の電子ブックリーダーKindle。ボクは現行機種が販売された6ヶ月ほど前から愛用している。とりあえずは洋書のみの販売ということだが(いつものことながら、日本は新型メディアへの対応が遅い)、英語が堪能な人や現在学習中という人には安く洋書が手に入るチャンスである。

これまでにもソニーなどから電子ブックリーダーは発売されていたが、市場ではことごとく失敗していた。Kindleも発売当初は駄目だろうという見方が多かった。スティーブ・ジョブズも「人々は本を読まなくなった」とあしらっていたくらいだ。

ところが予想に反し、Kindleは熱心な読者層を中心に成功をおさめた。他社もこぞって独自の電子ブックリーダーを開発するようになった。アップル社でさえ現在開発中と噂されるタブレット型パソコンで、マーケットへの参入を狙っているようだ。

ではKindleはこれまでの電子ブックリーダーと何が違ったのか?

薄くてエレガントなデザイン、最大2週間の連続使用が可能という電池、目に優しく屋外でも読める電子インクの採用なども魅力的だが、何といっても革新的なのが携帯回線を使ったAmazonストアとの連携である。パソコンにつないだり、無線LANに接続したりしないでも、好きな時に、好きな場所で、好きな本を購入できる

街中を散歩していて、ふと何かを読みたいと思った時、Kindleがあればその場でAmazonストアに接続できる。本屋で立ち読みする感覚で本を探し、無料サンプルをダウンロードしてベンチやカフェで読書なんてこともお洒落だ。

Kindleでは本以外にも、新聞や雑誌、ブログを購読することができる。朝起きたら、その日の新聞が既にKindleへとダウンロードされているのは嬉しい。話はそれるが、インターネットで全ての新聞記事が読めるのが当たり前となったアメリカでは、パソコンにつなぐ手間のいらないKindleのようなリーダーに記事を配信して購読料をとるのが、新聞社が生き残るすべとなるのではいかと思う。Kindleでは新聞購読に際して2週間のお試し期間があるので、まずはいくつかの英字新聞を試してみるとよい。

iPhoneにもKindleのアプリケーションが用意されている。iPhone単体でも使えるようになっているが、Kindleと合わせて使うのがおすすめ。Kindleで購入した本はiPhoneにもダウンロードできる上、一方で読み進めた場合、もう片方の機器でもしおりを同期してくれる。ちょっと時間が空いたときにはiPhoneで、続きは自宅のソファに座ってKindleでというのは便利だ。

今やパソコンのみならず、携帯端末でもあらゆる情報を手に入れられるようになったが、パソコンや携帯電話のモニタで長時間の読書というのは快適とはいえない。Kindleはその点、情報を発信するという機能をそぎ、情報を読むことに特化することでマーケットを確立した。本だけにとどまらず、新聞、雑誌、ウェブなどあらゆる情報を手に入れることができるKindleは、電子ブックリーダーではなく、電子リーダーと呼ぶのが正しいのかもしれない。紙という媒体に変わる、「読む」ためのメディアなのだ。

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2009年10月28日

男女という壁を越えるには

社会進出における性別格差の度合いを評価した「男女格差指数」が発表され、日本は依然75位と先進7カ国中で最下位だった。同じリストで31位と、決して先進国中では上位とはいえない米国に住んでいても、その差は日々感じられる。

日本語の記事はこちら

デューク大学に交換留学した時、まず新鮮に感じたのが、大学の学長から留学センター長に及ぶまでトップの地位が女性で占められていたこと。それまで日本で通っていた学校や働いていた職場では、女性がマネジメント職についているのをほとんど見たことがなかった。

テネシー大学の体育会で働いていた時も、自分の直属の上司が女性であったのだが、慣れないことに当初は違和感を感じた。恥ずかしいことに、男性は女性をリードすべき存在という価値観が知らず知らずのうちに染み付いていたのだ。こっちでの生活が長くなるにつれ、ようやくそうした呪縛から解放されるようになった。今では上司が男性か女性かなどということはほとんど意識しない。

日本でも徐々に女性の社会進出が広まっていることは確かである。実際、ランキングも前年の98位から大きく上がっている。「女性幹部の登用」で6位というのにも正直驚いた。しかし、社会制度や個々の意識という点では未だに遅れているといわざるをえない。

例えば男女が結婚する際、働き続けたいという女性の意志があっても、日本の場合は状況がそれを許さないことも多い。会社が夫に転勤を命じれば、妻は自分のキャリアを諦めてそれについていくしかない。ボクの周りでも、結婚した有能な女友達が、夫の都合に合わせるため退職しているという話を耳にする。

それに対しアメリカ人の若い夫婦やカップルは、ともに働くことのできる道を模索するケースが多いように思う。卒業して教授職に就いたボクの大学院時代の友達は奥さんと一緒に引越し、奥さんもその地域ですぐに中学校の教職に就いた。弁護士の奥さんを持つ別の男友達は、彼女のキャリアを応援するため、ようやくありついたスポーツマーケティングの仕事を諦めて、彼女の赴任地で再び就職活動を行った。

結婚というのは何も男子が女子を養うわけではないはずだが、日本では残念ながら社会や企業のシステムがその傾向を助長している。アメリカに暮らして数年、最近では結婚を一方的な扶養関係ではなく、対等なパートナー関係として見るようになった。

女性の社会進出を含め、男女平等を実現するには、まずは「男だから」「女だから」という認識を排除することから始めなくてはならない。男だから運転席に座るのが当たり前、女だから威厳に欠けるなどという発想がはびこっているうちはまだまだである。仕事関係であれ、恋愛関係であれ、男性は女性を異性としてみる前に、一人の人間として見ることが大切なのではないか。

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2009年10月20日

大リーガーの奥さん

田口壮外野手の妻である恵美子さんが、NHKのウェブサイトにコラムを連載している。

田口選手の日記は既に有名だが、恵美子夫人の文章力も元アナウンサーとだけあって負けていない。普段あまりスポットライトを浴びることのない、大リーガーの奥さんの生活。異国の地で夫に負けないくらい奮闘していることが素直な文章から伝わってくる。

アメリカでの生活になじめない日本人選手が多い中、積極的に英語でコミュニケーションをはかり、同僚やファンから愛される田口選手。残念ながらシカゴ・カブスからは解雇されてしまったが、40歳になってもマイナーリーグでプレーし続ける姿勢には胸を打たれる。彼の成功の裏には温かく、そして芯の通った恵美子さんの存在があるに違いない。

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2009年10月14日

子を見て親が分かるのは日本人だけ

楽天・野村克也監督が、首脳陣批判を行ったトッド・リンデン外野手を登録抹消した。リンデンは同監督に謝罪したが、事態は悪化。

「目を見りゃわかる。心から謝っていないよ。“その目は何だ”と言った。ダメ、反省の色はない。もう、フロントにげたを預けた」と野村監督は言う。(サンケイスポーツ記事より

リンデンがTシャツにハーフパンツとラフな服装で謝罪に訪れたこともいい印象を与えなかっただろう。しかし問題の本質は、日米の文化的差異にあるように思われる。

反省の意を示す際、日本人がうつむき加減になる一方、アメリカでは相手の目を正視するのが普通。リンデンのその視線が野村監督に反抗的だと受け取られた可能性は十分ある。「目を見りゃわかる」のは相手が日本人の場合にとどめておく方がいいのかもしれない。

野村監督が「日本では“子を見れば親がわかる”というんだ」と説教し、リンデンが"逆ギレ"したとも報じられている。「親の顔を見てみたい」というのは 日本ではよく使われる言い回しだが、アメリカでは説教をするのに親を引き合いに出すことはない。上司が部下を諭す場合であっても、それは無作法である。家族をバカにするというのは、アメリカでは最大の侮辱に当たる。野村監督の発言が直訳されたとしたら、リンデンが怒り出すのも無理はない。

リンデンが心から反省していたかは分からないが、文化的な誤解によって関係に歪みが生じたのであれば、修復の余地はあるだろう。通訳にとっては腕の見せ所である。

ところで、日本のマスコミが外国人選手に対し、依然として「助っ人」という表現を用いているのには首をかしげざるをえない。イチローや松井がアメリカでそんな呼ばれ方をするだろうか。「助っ人」という言葉には、正式にチームやコミュニティの一員ではないという含みがある。日本に住む外国人がどれだけ疎外感を感じているのか、一度考えてみてほしい。

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2009年10月11日

怪物中の怪物高校生

タンパベイ・レイズの本拠地トロピカーナフィールド。ここでの最長ホームラン記録を持っているのがなんと16歳の高校生である。

ラスベガスに住むブライス・ハーパーは、今年1月にトロピカーナフィールドで行われた国際ホームラン競争で、153メートル弾を放った。しかもボールが外野席後ろの壁にぶつかっていなければ、更に距離が伸びたという。平均143メートルとプロ顔負けの飛距離をたたき出し、一躍脚光を浴びた。

以下がその映像である。



身長190センチ、体重93キロの恵まれた体を持つ彼は、走攻守三拍子揃ったキャッチャーとして、これまで国内外問わず、あらゆる大会で賞を総なめにしてきた。スイングスピードはマーク・マグワイアを上回り、マウンドに上がれば155キロの速球を投げる。まさに怪物中の怪物である。

現在ではいち早くプロに上がるため、高校を中退してGED〔高等学校卒業程度認定試験)取得に向けて勉強中。来年夏のドラフトでは、17歳にして全体1位指名が予想されている。

野球は技術や経験が大きな比重を占めるため、バスケットボールやホッケーなどに比べて選手の育成に時間がかかると言われる。しかし、スポーツイラストレイテッド誌の取材に対して、18、19歳までにはメジャーでプレーをして、史上最高の野球選手になりたいとまで言いきる16歳には、そんな理屈は当てはまらないのかもしれない。

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