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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2016年7月14日

LINEがアメリカで流行らない理由

日本では今やおじいちゃん、おばあちゃんから子どもまで利用しているLINEが、米国時間の明日に日米同時に株式上場します。

今年最大のテック系会社のIPOということで、シリコンバレーやウォール街が注目しているようです。ただし、全世界で2億1800万ものアクティブユーザーを持つLINEも、一般米国人における知名度はほぼゼロです。未だにアジア人以外で使っている人に会った記憶がありません。

その大きな原因は、LINEのウリとも言えるスタンプがウケないから。絵文字はEmojiとして大ブレークしましたが、日本人にカワイイともてはやされるコニーやブラウンといったキャラの良さは理解されないのです。(ちなみに英語では、スタンプではなくステッカーと呼ばれます)

英語のLINEはこんな感じです。
同僚たちにシュールなスタンプを見せたところ、何を表現しているのか分からないと言います。また顔文字も見せたのですが、アメリカ人には顔であることすら判別できません。当たり前だと思っていた感覚が、実は育っていく環境で無意識に培われたものなのだったと気づかされる出来事でした。

僕たち日本人がムーンの表情やブラウンの無表情さを見てシュールだと笑えるのは、ちびまる子ちゃんのような漫画やアニメを見て育ったからでしょう。LINEのキャラクターを考えたデザイナーも昔から漫画好きだったそうです。

日本の漫画を読んで育っていないアメリカ人が、日本人と異なる感覚を持つのは当然のこと。逆にアメリカのコメディー映画が、日本人に通じないことってありますよね。

アメリカでLINEが広まらない話を日本人にすると、どうしてスタンプの良さが分からないんだろう、という反応がよく返ってきます。フェイスブックのスタンプは全然かわいくないのだから、LINEは絶対ウケるはずだと言います。でも、そのメンタリティーこそが日本のビジネスが海外で苦戦している理由なのです。

食や芸術などもそうですが、個々の好みの差が激しい分野で、自分たちの感覚が正しい、上なんだという発想は傲慢です。

アメリカのお菓子はこんなにまずいのだから、美味しい日本のお菓子を売れば大成功するはずと考える人は多いですが、未だにアメリカのスーパーに行っても日本のお菓子は売っていません。こっちの消費者は同じようには感じないのでしょう。アメリカで寿司が人気だと言いますが、一般ウケしているのは、握りを中心とした江戸前ずしではなく、こっちで考案されたロール「Sushi」です。

海外でビジネスをする際は、まずは自分たちの常識だと思っている感覚を試すところから始めるべきなのだと、つくづく痛感させられます。

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