自己紹介

自分の写真
米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2017年10月11日

オレンジカウンティにアマゾン本社がやって来る??熾烈をきわめる誘致合戦

アマゾンが第2本社を北米に建設することを発表して話題になりました。

しかも異例の公募。

アマゾンのシアトル本社。(Image courtesy of Amazon)
50億ドル(約5600億円)以上の投資と、5万人もの雇用が見込まれるということもあり、全米の都市がいっせいに名乗りをあげました。

先月にその発表があった日は、経済部の記者に任せて僕は全く気にも留めていませんでした。ところが、担当するアーバインの市議会議員と別件について電話で話していたら、アーバインもアマゾンの公募に参加するつもりだとさらりと言われます。

すぐに経済部のリーダーに知らせると、オレンジカウンティではアーバインだけが名乗りをあげているようなので、僕が中心となって記事を書くことに。

アーバインはオレンジカウンティではビジネスの中心地ですが、人口26万人と一つの都市としては小規模で、外部からはベッドタウンと見られがち。公募に参加するだろうと考えていた人は少ないようで、経済専門紙などに先駆けてネット上に記事をあげることができました。

するとなんと、アーバインを計画開発し、今も街の大部分を管理している大手不動産会社アーバインカンパニーの会長であるドナルド・ブレン氏が、アーバインのアマゾン誘致に協力するという声明を発表。しかも当初は僕宛にだけ。

オレンジカウンティで最も大きな影響力を持つと言われ、トランプ大統領をはるかにしのぐ全米一の不動産王と評されるブレン氏ですが、公の場に滅多に姿を表さないことでも知られています。その彼がメディアに声明を出すのは異例のこと。

ニュースルームでは、ブレン氏が最後に声明を出したのがいつだかすら記憶にない、大スクープだとちょっとした騒ぎになり、翌日の紙面構成が急遽変更になりました。

ネットに最終版の記事が掲載されると、知り合いのPR担当者たちからは、どうやってブレンの声明を得たんだ、信じられないという電話やメールがきました。

次の日には、ロサンゼルス・タイムズや経済専門メディアなどが後追い報道。オレンジカウンティと名前がついているだけに、地元のニュースに関してだけは負けるわけにはいかないプライドがあるので、嬉しいスクープです。

(英語の記事はこちらをクリック。)

知名度でニューヨークやロサンゼルスなどの大都市にはるかに劣るアーバインが誘致合戦に勝つには、宣伝も必要になります。ブレン氏もその影響力を意識しての声明だったのだと思います。

アーバイン市内に180エーカー以上の広大なアマゾン本社を作れる土地を所有しているのは、アーバインカンパニーくらい。市としては、とてつもなく大きな後ろ盾です。

もしアマゾンの第2本社がアーバインに来るとなれば、オレンジカウンティ全体にも大きな影響があることは間違いありません。

平均収入10万ドル(約1100万円)の社員が5万人も雇われるとなれば、周辺のお店やレストランなどのサービス業は潤います。他の企業が相乗効果でオレンジカウンティに進出することも期待できます。

先週は、オレンジカウンティの他市やビジネスコミュニティの間で、アーバインの誘致活動を応援しようという機運が高まっているという記事を書きました。

(英語の記事はこちらをクリック。)

正直なところ、現在のアマゾン本社と同じ西海岸にあり、不動産価格が高く、公共交通機関が発達していないという弱点もあり、アマゾンがアーバインを選ぶ可能性は低いというのが専門家たちの見方です。

それでも、最高の気候や優れた公立学校、治安の良さ、ビーチへの近さなど、生活の質の高さという武器があるので、可能性はゼロではありません。

アマゾンの発表は来年になりますが、オレンジカウンティ全体が固唾を呑んで見守っています。

このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿