先日、RKBラジオの情報番組「インサイト」に電話出演した時も、アメリカではどれくらい銃が日常生活にあふれているのかと聞かれました。
乱射事件や3億丁もの銃が出回っていることがニュースで報じられると、アメリカには銃を持っている人がたくさん街を歩いているのではないかとイメージされるかもしれません。
でも実際には、安全な都市部や郊外に住んでいる一般市民が、銃を目にしたり手にしたりする機会というのは、自らがすすんで所持しない限りは、アメリカでもほとんどないのです。警察官が持っている以外は、銃を見たことすらないというアメリカ人もざらにいます。
僕自身、アメリカに13年ほど住んでいて、銃を所持したことはありませんし、必要を感じたこともありません。
ハーバード大学などの研究者が行った調査では、アメリカには2億6500万丁の銃が出回っているそうです。これは成人1人あたり1丁以上の数ですが、銃を所有しているのは人口の22パーセントにすぎません。
さらに、出回る銃のうち半分を全成人の3パーセントに当たる人々が所持しているといいます。「スーパーオーナーズ」と呼ばれる彼らは、1人当たり平均17丁もの銃を持っているとのこと。
つまりみんなが銃を持っているのではなく、一部の人がたくさん所有しているのです。
では銃を持っているのはどういう人なのでしょう?
ギャングなど都会の犯罪者をイメージするかもしれません。
しかし、先ほどの調査によれば、銃所有者の多くは田舎に住む保守的な白人男性です。ギャラップのアンケートでは、田舎の人が銃を持つ割合は都会の2倍にもなります。
州ごとの所有率を見ると、人口密度の低い内陸部ほど高いことが分かります。田舎では銃が伝統や文化として生活に根付いているからです。
ビクターバレーにある射撃場。田舎には銃が文化として根付いています。 |
実際、僕が住んでいたビクターバレーというロサンゼルスから車で2時間くらいの砂漠の地域では、周りに銃を持っていることを公言する人がたくさんいました。彼らの多くは、治安が悪化していること、家に泥棒が入ることを心配していました。
ビクターバレー時代の同僚Rは、銃を自分でカスタマイズしたり、コレクションしたりする愛好家。息子には5歳の時から銃の扱いを教えています。
そんなRは大人になるまで銃をほとんど見たことがなかったといいます。だから奥さんとなる彼女の部屋で銃を見つけた時は、恐怖にかられたそうです。その後、奥さんの家族が筋金入りの銃愛好者たちであることから、Rは射撃場で銃を撃つようになります。
そして全米ライフル協会の熱心なメンバーだった義父が亡くなり、彼の意志を引き継いで家族を守るために銃を持つことを決意したそうです。
Rは市民が銃を持つ権利は、言論や信仰の自由といったその他の権利をヒトラーのような独裁者から守るために必要なんだともいいます。こういう政府に対する不信感を持つアメリカ人は少なくありません。
ただし、そんなビクターバレーでも、街中で銃を目にするということは、ほぼありませんでした。
というのも、カリフォルニア州は規制が厳しく、公共の場での銃の携帯は禁止されているからです。車や家の中での管理についてもルールが決まっています。
他にもニューヨークなどの都市部では規制が厳しいため、観光や駐在で来た日本人が、銃を携帯している一般市民を見かけるのは、国立公園がある田舎に旅行する時くらいでしょう。
ちなみに安全で人口の密集しているオレンジカウンティに引っ越してからは、銃を持っていると公言する人にすら、ほとんど会ったことはありません。そもそも銃に関する関心が薄いように思います。
このように、アメリカでは住んでいる場所などによって、銃が身近にある人とそうでない人との経験に大きなギャップがあるのです。アメリカが分断されている理由がここにも見えてきます。
最後に付け加えますが、いくらカリフォルニアや都市部で規制が厳しいとはいえ、日本に比べれば銃が簡単に手に入ることは間違いありません。スポーツ店などに行けば銃が並んでいます。
そんな銃を使って、ラスベガスでは1人の男が600人以上をも殺傷。昨日は全米有数の安全な街である我が家のすぐ近くで、2人が殺される銃撃事件が起きました。
そんなニュースを聞くと、いくら街中でおおっぴらに銃を持っている人を見かけなくても、誰かが持っているかもしれないという恐怖は感じてしまいます。
銃に興味のない僕のような者からすれば、やはり日本のように個人の所持は厳しく規制した方が安心して暮らせるのにと思わずにはいられません。
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