女子ワールドカップの決勝戦を見ながらこの記事を書いている。アメリカの前半の猛攻を日本が耐え忍んでいる。
大会の放映権を持つESPNにとっては、願ってもない組み合わせである。
アメリカチームは、ブラジル戦でスポーツ史に残るカムバック勝利を収めて決勝に進んだ。アメリカが優勝した1999年の女子ワールドカップを見て育った選手たちが、自分たちの名前を歴史に刻むチャンスである。
地元開催での初優勝は米女子スポーツ界に大きな影響を与えた。当時の米チームの活躍は、1972年に施行された「タイトル9」という法律なしにはありえなかった。タイトル9は、スポーツを含めた教育の場において、男性と女性に平等の機会を与えることを義務づけた。男性に対する逆差別だという声をあるが、この法律が女性の社会進出を促したことは間違いない。
ロサンゼルスのスタジアムが9万人のファンで埋め尽くされた1999年大会決勝戦で、最後のPKを決めたブランディ・チャステインは、ユニフォームを脱ぎ捨ててガッツポーズをきめた。
「あの瞬間を見た少女たちは、自分たちも『やった!』って叫んでガッツポーズをしてもいいんだって思ったに違いない」と彼女はインタビューで語った。
「女性は何をしちゃいけない」という社会的制約を破って、自分らしく生きる勇気を与えたということだろう。あの試合は、政治や法律が社会や個人の意識に変革を起こした証でもあった。
ところで試合はハーフタイムで0−0。日本は立ち上がり、アメリカのプレッシャーになかなかペースをつかめず、持ち味のパス回しにもミスが目立った。
ESPNの試合前の番組では、ドイツを破った日本チームの活躍を東日本大震災からの復興と重ね合わせて、大きく扱った。国民の期待に応えようとする日本代表が、まだ一度も勝てていない世界ランクNo. 1アメリカに挑むというシナリオは、彼女たちを応援したいという気持ちにさせる。
MF宮間あや選手が、地震で知り合いを失ったのは「とても悲しいですけど、その人たちの分まで、自分たちが楽しく生きなければいけないと、今は思っています」と話していたが、その通りだと思う。
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