自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2013年5月18日

廊下にあふれる新顔

オレンジ・カウンティ・レジスター本社の廊下を歩いていると、新しく雇われた社員の顔写真が目に飛び込んでくる。久しぶりに本社に立ち寄ったら、僕の写真もちゃんと貼られていた。

レジスター報道局の廊下に張り出された新社員の写真。最初は中央の額の中だけだったのが、増えすぎてしまったのだという。
僕の写真は、目立つ角に貼られていた。坊主にした直後に撮られてしまったので、余計に若く見える。
親会社が多額の借金と不況のあおりを受けて破産したレジスターは、昨年の7月に39歳の投資家、アーロン・クシュナー氏に買収された。グリーティングカードのビジネスで財を築いたクシュナー氏は、新聞業界の常識をくつがえす戦略で、レジスターの復興に取り組んでいる。

その一つが報道、つまりは製品への投資だ。レジスターはこの一年未満で、報道局だけでなんと100人以上もの記者やカメラマン、デザイナーを雇い、業界で注目を浴びている

新聞離れは、何もインターネットの普及だけが原因ではない。市民のニーズに応えるようなコンテツを提供してこなかったジャーナリスト側にも問題がある。それに加えて記者の削減は、新聞の質の低下を招いた。一時は380人に達したレジスターの報道局も、10年間で180人にまで減った。これでは購読者を失っても仕方がない。

他では得られない質の高い情報を提供すれば、読者はお金を払ってくれるというシンプルな発想に基づいて、今のレジスターは運営されている。ジャーナリズムにお金をかけてくれる新聞で働きたいと、レジスターには全米から記者たちが集まるようになった。

他紙の記者と話をすると、レジスターが膨れ上がった人件費を補うだけの収入を得られるのかという疑問の声を耳にすることも多い。でも彼らも、ジャーナリストとしては、僕らの取り組みが成功してほしいと心の底では願っているようだ。

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2013年2月22日

転職と引越し

突然の報告になってしまうが、月曜日から新しい新聞社で働き始めた。

実は昨年の十月に、高校と大学で同級生だった日本人女性と入籍し、彼女が仕事に就きやすい環境を求めて、ビクタービルを離れる決意をした。

新しい職場は、オレンジ・カウンティ・レジスター (OCR) というオレンジ郡の大手日刊紙。オレンジ郡はロサンゼルス郡に隣接し、日本人や他のアジア人が多く住む。

僕は、郡の南部に位置するランチョ・サンタ・マルガリータという市の担当記者として雇われた。OCRの本社はサンタアナにあるが、僕は普段はレイクフォーレストにある南部オフィスで働く。

五年間勤めたデイリープレスを離れるのは寂しいが、小さな新聞でやれることはやりきったという思いはある。

他紙がコスト削減に躍起になり、インターネット戦略に精力をつぎ込む中、OCRはたくさんのジャーナリストを雇い、「紙」製品の品質向上に投資する道を選んだため、業界から注目を浴びている。新聞の救世主になるかもしれない取り組みに関われることに、今からワクワクしている。



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2012年12月21日

愛を伝えよう



近くの高校に出向いて、ティーネイジャー間のドメスティック・バイオレンス(DV)について学生たちの本音を聞いてきた。二年前に、被害者にインタビューしてDV関連の記事を何本か書いたのがきっかけで、地元の非営利団体とつながりができ、先週も被害者を保護するシェルターを訪れた。

日本ではDVが家庭内暴力と訳されることからも、夫婦間の問題だと考える人が多いが、恋人間でも同じような虐待は起こる。DVでは、一方が相手を独占したいという気持ちを愛情として押し付けることで、パートナーを支配しようとする。恋人が異性と仲良く話しているのを見て嫉妬し、やめるように促したり、暴力を振るったりするのはその典型だ。ありのままの相手を尊重し合える関係が健常なのだと、DVのカウンセラーはいう。

初めてこの問題を取材した時、自分にも加害者行動で思い当たるふしがあり、罪悪感が湧いた。でも問題に気づけたことは、その後の恋愛に役立った。気づき(英語ではawareness) 、そして素直に認めることが問題解決の出発点だ。

今朝の取材では、高校生たちと椅子を円に並べて座り、ディスカッションを行った。

アメリカ人のティーネイジャーたちは、日本人の同世代に比べて、恋愛観が発達している。もちろん個人差はある。それでも、多くの学生は自分たちの恋愛感情や関係を、親や友達にオープンに話す。校内を見渡しても、あちこちでカップルが手をつないだり、キスをしたりしている。ボディーランゲージや言葉で感情をストレートに表現して、たくさんの恋愛を重ねることで成長するのだろう。

今回のディスカッションに参加してくれたクラスでは、「I love you」を意味する手話を使って、クラスメートに「あなたのことを想っています」と伝える決まりになっている。恥ずかしそうに自分の恋愛の失敗談について話す男の子に、クラスメートたちが手話サインを送って励ます光景は、まるで映画のワンシーンだった。

好きな人に愛情を伝えることの大切さを、アメリカで暮らすうちに学んだ。

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2012年12月17日

いまだにガイジン扱いの外国人選手


スポーツ新聞のプロ野球記事を読んでいると、ボクが日本にいた7年ほど前と、日本人の国際感覚がさほど変わっていないのだと感じてしまう。


今も昔も、日本でプレイする外国人選手たちは、「助っ人」と呼ばれる。この表現は、彼らがチームの正式メンバーではない、一時的な存在であることをほのめかす。会社でいうところの「ハケン」のようなものだ。

日本に住む外国人の友人たちは、日本人は親切だけど、彼・彼女たちをいつまでもお客さん扱いして、日本人と同じようには扱ってくれないと口にする。見た目や生まれ育った環境が違っていては、どんなに努力しても「日本人」にはなれないということなのだろう。

アメリカでイチロー選手が助っ人などと呼ばれることはない。日本人だろうが、あくまでヤンキースの一員として扱われる。ボクもアジア人が一人だけの今の職場で、よそ者扱いされたことはない。同僚たちと対等の一記者である。

正直言うと、ボクもアメリカに来た当初は、自身を含めた米国外からやってきた移民や他国籍の人間を、米国籍の人間とは別のカテゴリーとして無意識のうちに区分していた。日本で生まれ育ったことで、そうした感覚が染み付いていた。でも、他国で生まれ育ったことに興味をしめしつつも、お客さん扱いをしないアメリカ人の姿勢に徐々に慣れてきた。

日本人の通念を崩すためにも、まずは「助っ人」という呼び方をやめてはどうだろうか。

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2012年11月8日

大統領選挙の運命を決めた「少数派」

統計ギークたちの予想通り、オハイオ州を獲得したオバマ大統領が再選を果たした。(まだ結果の出ていないフロリダ州でオバマ氏が勝てば、全50州でネイト・シルバー氏の予測が的中したことになる。)

上院では民主党が議席を伸ばしたものの、下院では共和党が過半数以上を維持したため、結果としてはねじれ議会の現状が維持された。オバマ大統領が、二期目にどれだけ議会の協力を得られるかに注目が集まる。

今回の米大統領選挙で感じたのが、選挙人口構成の変化である。2000年と2004年にブッシュ大統領を当選させる原動力となったのは、人口の20パーセントを占めるといわれる保守的キリスト教信者たち(Evangelical Christians)。2010年には、ティーパーティー運動が共和党の下院選挙での勝利に貢献した。

ところが今回の上院選では、共和党の予備選挙で勝利を収めた保守派候補たちが、本選で中道派の投票者に嫌われて、民主党候補に負けてしまうという事態が起こった。経済に関しては、小さな政府を目指す保守派政策が独立派に支持を得られても、中絶や同性愛といった社会問題に関する保守派の主張は、女性や若者から敬遠されてしまう。

それに対して民主党は、ヒスパニックや黒人といった少数派に加え、女性や若い有権者などから幅広い支持を受けた。オバマ陣営は、選挙終了ギリギリまで、投票率が低いと言われる人種マイノリティの多い地区に出向いて投票するように促し続けた。

テレビに映っていたロムニー氏の陣営本部が、お洒落な格好をした白人でいっぱいだったのに対し、オバマ大統領の本部は、多様な人種と年齢層の支持者が入り交じっていた。マイノリティの人口は増える一方だし、有権者の半分以上を占める女性から敬遠されたら話にならない。共和党は、今後いかに支持層を広げられるかが課題である。

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2012年11月7日

アメリカの将来を決める議員選挙

大統領選挙ばかりが注目されがちだが、今日は全米の地方選挙も行われた。

うちの新聞も、地元の下院・上院議員はもちろんのこと、郡の行政官、市議会議員、教育委員の選挙まで朝刊に載せるするため、報道局は締め切りギリギリまで粘って作業をしている。(ボクは朝のシフトを任されていたため、既に帰宅してのんびりとニュースを見ている。)

誰が次のアメリカ大統領になるかが、世界の動向に大きな影響を及ぼすのは間違いないが、それと同じくらい重要なのが連邦議会議員選挙である。


この四年間は、議会のこう着状態がアメリカに深い傷あとを残した。両党がお互いに一歩も譲らないことで、予算法案がなかなかまとまらず、米国債の格下げをまねいた。ティーパーティー運動やウォール街占拠運動で表面化したように、国内で右派と左派の両極化が進んでいるのが原因である。

大統領は議会の協力がなければ、選挙でかかげた公約はとても実現できない。大統領や他党議員と力を合わせて国を運営していくことのできる中道派議員が、どれだけ当選できるかが経済回復の大きなカギとなる。

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2012年11月6日

マネーボール旋風が政治に?


米大統領選挙が明日に迫った。世論調査や大手メディアの報道だけを追っていると、接戦だという印象を受けるが、統計学を使って独自の予測をしているギークたちの間では、オバマ大統領が優勢との見方でほぼ一致している。

最新の全米世論調査では、オバマ大統領とロムニー氏の差は1、2パーセントポイント程度。しかし、アメリカの大統領選挙は選挙人団制度を取り入れているため、各州で勝った候補が、その州の選挙人を全て獲得する。だから、総得票数で上回った候補が勝つとは限らない。

アメリカには50の州があるが、勝敗を決めるのは、民主党や共和党のどちらが勝ってもおかしくないswing states(揺れる州)と呼ばれる州である。今回はオハイオやウィスコンシン、ネバダ、アイオワなどの州が勝敗の鍵をにぎると言われている。

データギークたちは、数十もの世論調査の結果を総合して、それぞれの州で支持率の平均をはじきだす。それを過去の統計データと比較して、各候補の勝率を計算する。各世論調査ではほとんど差のないswing statesでも、サンプル数を増やすことで、より正確な確率が導き出せるとの考えだ。

選挙の統計的予測で有名なのが、ニューヨーク・タイムズに寄稿するネイト・シルバー氏。彼はセイバーメトリクスと呼ばれる野球の統計分析で名を馳せた後に、政治アナリストに転向した。2008年の大統領選挙では、50州中49州での勝者を的中させた。選挙前日の予想では、最も重要なオハイオ州で優勢なオバマ大統領が、90パーセント以上の確率で勝つという

前回の選挙では知る人ぞ知る統計的予測だったが、今回はメディアにも大きく取り上げられて、一般大衆からも注目を集めている。その注目度ゆえに、経験や”勘”を重んじる古参の政治アナリストたちからは、強烈な批判を浴びている。映画「マネーボール」を見た人は分かると思うが、セイバーメトリクスも10年ほど前にメジャーリーグで同じような扱いを受けた。

大統領選挙がメジャーリーグと違うのは、本番が4年に一度しか行われないこと。シルバー氏は必ずオバマ大統領が勝つと宣言しているのではない。オバマ大統領がロムニー氏に勝つ確率は、サイコロを振って1から5までの数字が出る確率と同じくらい。だからどっちかに金をかけろといわれたら、オバマさんにかけると言っているのである。もちろん6が出る確率も十分にある。

それでもシルバー氏の予想が外れたら、政治アナリストたちは待ってましたとばかりに、彼を叩くだろう。今回の選挙は両候補だけでなく、データギークたちにとっても命運を分ける戦いとなる。


ネイト・シルバー氏のインタビュー

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