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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2009年11月12日

シアトルで最も愛される男

ケン・グリフィー・ジュニア(39)がシアトル・マリナーズと一年契約に合意した。

ひざに故障を抱えるグリフィーは、今季は指名打者として古巣の再建に力を貸した。シアトルのファンの間では、今回の契約に賛否両論の声が上がっているようだが、グリフィーのチームへの貢献は個人成績だけでは測れない。

昨年まで不穏な空気が漂っていたマリナーズのクラブハウスが、今年一転して明るくなったのはグリフィーの加入が大きいと言われている。これはボクもマリナーズを取材した時に少なからず実感した。

グリフィーは試合前のロッカールームで誰彼かまわずジョークを飛ばしたり、いたずらをしたりする。同じ時期にマリナーズへ移籍したベテランのマイク・スイーニーにサプリメントの一気飲みをさせてチームを沸かせたり、初対面のボクが掲示板を読んでいるのを邪魔してきたりと、とどまるところを知らない。

これまで特別な存在だったイチローとて例外ではない。グラウンドでウォームアップしていたイチローに突然襲いかかって、力ずくで地面に押し倒し、上からのっかかってギブアップさせた。笑顔でじゃれあう二人はまるで小学生である。グリフィーがやって来るまで、スターのイチローにそんなことをできる選手はいなかったであろう。

その後、ボクがクラブハウスとダッグアウトを結ぶ通路を歩いていると、イチローが「ジョージ(グリフィーのニックネーム)」と叫びながら笑顔で駆け抜けていった。ロッカールームで一人静かに着替えていた男と同一人物とは思えない。

イチローのみならず、多くの大リーガーから尊敬を集めるグリフィー。長年苦しんできた怪我がなければ、どれだけの記録が打ち破られていたことか、今では想像することしかできないが、彼の野球界での功績が数字だけではないことを、もう一年噛み締めることになるに違いない。

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