自己紹介

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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2011年2月12日

エジプト人クリスチャンの苦悩

ムバラク大統領が辞任したというニュースを見て驚いた。こんなにも早く政権交代が進むなんて。Facebookやtwitterのようなソーシャルネットワークなくして、この革命は起こりえなかっただろう。インターネットが世界を変えるとはこのことだ。

今日は昼から、ハイデザートに住むエジプトからの移民たちとの座談会が予定されていたので、ボクにとっては見事なタイミングでの辞任だった。

集まったのは、全員がキリスト教信者。イスラム教徒が90パーセントを占めるエジプトで、クリスチャンは雇用から政治に及ぶまで様々な社会的差別を受けているという。多数派のエジプト人とはちょっと違った視点で、今回の革命を見守っている。

彼らは民主主義への動きを歓迎する一方で、イラン革命のようにイスラム原理主義者たちが政府をのっとるのではないかと心配している。独裁政治ではあったものの、イスラム原理主義活動を規制してきたムバラク大統領を支持するクリスチャンも少なくない。

あるエジプト系アメリカ人の若手弁護士は、「民主主義や自由が叫ばれているけど、イスラム国家で民主主義が成り立つのかは疑問。大多数が望めば、クリスチャンの大量虐殺だってありえない話じゃない」と話す。単なる多数決の民主主義なら、選挙によって多数派が少数派の権利を奪うことだって可能だ。

人々が信仰によって区別されるエジプトで、民主主義がどのように機能するのか。中東情勢から目が離せない。

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2011年2月11日

おすすめiPhoneアプリ1:快適に起きられる目覚まし時計

朝型人間からは程遠い自分にとって、目覚まし時計は欠かせない。通勤時間わずか5分なのに、毎朝つらい思いをしている。高校時代、よく6時前に起きていたなと、自分でも不思議になる。

そんな自分を助けてくれているのが、Sleep Cycleというアプリ。眠る前にiPhoneを電源につないだまま枕元において置くと、加速度センサーを使って寝返りを測定し、眠りの深さをモニターしてくれる。


人間は身体が眠っているのに、脳が活動しているレム睡眠で起きるのが一番楽だという。Sleep Cycleは、設定した時刻の30分前以内でレム睡眠状態の時に、静かなアラームを鳴らしてくる。しかもスヌーズ機能がついていて、二度、三度寝で設定時刻ピッタリに起きられる。


更には、睡眠時間や眠りの深さをグラフ表示で記録してくれるので、自分の睡眠パターンが見られて面白い。むしろ目覚まし機能よりも役に立っているかも。



本当に使えるのかと、最初は半信半疑だったけど、今では99セントでは安すぎるくらい重宝している。

ちなみにボクは、電話やメールで起こされたくないのと、電磁波の悪影響を避けるため、iPhoneを機内モードにしてこのアプリを使っている。

Sleep Cycle alarm clock - Maciek Drejak Labs

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2011年2月8日

警察・裁判担当は「人気」記者

裁判担当になって、人々の犯罪に対するの関心の高さを実感するようになった。うちの新聞のサイトで最も読まれる記事のほとんどが犯罪と裁判。おかげで警察担当のビアトリズとボクで、「人気」を二分している。

広報担当のいない裁判所はボクの独壇場。ほぼ全てがスクープ記事だから、よくAP通信に拾われてハイデザート以外の人にも読んでもらえる。

ボクの取材した最近のヒット記事。

・告発しない見返りに、逮捕した女性に性的行為を強要したと疑われる警官の裁判。検察の主張では、服を脱がせて上半身裸の写真を撮ったり、パトカーの中でオーラルセックスをさせたりしたという。弁護人いわく、結婚がうまくいってなくて寂しかったとのこと。 
・子どもが虐待されていたと疑われるギャング一家の予備審問。被害者の男の子(5歳)は、満足に食事や水を与えられなかったため、ガリガリの状態で発見された。発見されたときの写真では、体中に傷や火傷の痕が。 
警察の話だと、子どもはクローゼットの中で生活を強いられ、殴られるのは日常茶飯事だったらしい。ガレージに宙吊りの状態でベルトでめった打ちにされ、家にいる男性たちからレイプされたともいう。主犯の男は、日常的に奥さんに暴力をふるっていただけでなく、愛人や10人の子供たちとひとつ屋根の下に住んでいたというのだから、すさまじい家庭状況だ。 
・マリファナのパイプを2歳未満の男の子にくわえさせたカップル。知人がその様子をビデオに撮って、警察に提出したもんだから大騒ぎ。ビアトリズの書いた記事は、AP通信に拾われて、地元の新聞やテレビ局だけじゃなく、東海岸のワシントン・ポスト紙にすら掲載された。 
こういう事件は検察官にとっては大変だ。パイプに火がついていたわけでもなく、法律に照らし合わせると大した事件じゃないのに、おバカな親への世間の反応はすさまじい。普通に扱えば、刑が軽すぎると大バッシングを受けてしまう。酔って子どもにビールを飲ませようとする親など、世の中たくさんいる。

CNNのようなケーブルニュース局が、悲惨な事件をやたらにセンセーショナルに報道しているのを見て、以前は「一体、誰がこんなの見るんだ」とうんざりしていたけど、視聴者が興味あるんじゃしょうがない。うちの新聞もそうした読者に寄りかかって、何とかやっているんだから。

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2011年2月6日

facebookってどんな会社なの?

facebookの時価総額が6兆円を超えて、日本企業と比べるとトヨタに続いて2番目の価値があるという書き込みがあった。本当にそこまでの価値があるかは別として、その影響力はすさまじい。取材で知り合った70歳以上のおじいさんが、ボクに友達申請を送ってきたくらい浸透している。

ではそのfacebookとはどんな会社なのか。下の動画は、タイム誌がfacebookのプロフィール欄担当チームの一日を追ったもの。大学生のような社員たちが、ざっくばらんとしたオフィスで仕事をしている。



本社の写真を集めたスライドショー

60 Minutesというドキュメンタリー番組では、カジュアルな雰囲気の中でも社員同士の競争を促す様子が描かれている。ロサンゼルス・タイムズ紙の記事によると、Googleとfacebookの間で、優秀なエンジニアの取り合い・引き抜き合戦が繰り広げられているらしい。

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「ヤバい経済学」で見る世界

相撲の八百長疑惑で、経済学者スティーブン・レビット氏の"Freakonomics"(邦訳「ヤバい経済学」)が日本でも注目され始めたようだ。
Source: Amazon Japan

数年前の本だけど、ボクは数ヶ月前に読んで以来、ファンになった。ニューヨークタイムズ紙のウェブサイトでは著者たちのブログも読める。

テーマは経済ではなく、社会科学の基礎である統計学を使って、物事の真相を解明すること。

- アメリカで犯罪が激減した最大の理由は、警察の取り締まりが強化されたからでも、景気が良くなったからでもない。中絶が認められたからだ。
- 給料やリスクを考えると、麻薬のディーラーは全く割に合わない仕事である。
- 子供の成功は親が何をするかではなく、親が誰であるかによって決まる(これは遺伝という意味だけではない)。
- 相撲や学校の統一テストは八百長を助長する仕組みになっている。

これまで当たり前だと思われてきた常識に対して質問を投げかけ、データと論理でそれを覆す。その姿勢は、「マネー・ボール」で紹介されている、野球を統計学で分析するセイバーメトリックスと共通している。まさにクリティカルシンキングだ。

Source: Amazon Japan

人の行動は道徳だけで決まるわけじゃない。モラルもインセンティブ(動機)の一つにすぎず、たとえ間違っていると思うことでも、利益が大きかったり、クビがかかったりしていれば、やってしまうというのが人間というもの。相撲で八百長がはびこるのも、力士にとってそうした方が得するシステムになっているからにすぎない。

経済学というのは、人びとを動かすインセンティブを理解して法則を導き出し、未来を予想したり、国にとっての利益が最大になるような政策を考えたりする学問だ。

相撲もスポーツとしての道を選ぶなら、力士のインセンティブを理解して、八百長したら損をするような制度をつくらなきゃだめだ。

- Posted using BlogPress from my iPhone

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2011年2月4日

見苦しい相撲協会の責任転嫁

メールという物的証拠が出てきたことで、相撲界の八百長がついに決定的となった。
大相撲の八百長疑惑で、2日の日本相撲協会の理事会の事情聴取に対し、十両の千代白鵬関、竹縄親方(元幕内春日錦)、三段目の恵那司力士の3人が関与を認めたことが3日、関係者の話で明らかになった。(スポーツ報知)
相撲の八百長はずっと前から疑われてきたことだけど、マスコミとの癒着もあって、うやむやにされてきた。

相撲協会は、メールのやり取りをしていた力士たちに責任をなすりつけようとしているけど、見苦しいったらありゃしない。八百長は力士のモラルの問題というよりは、相撲界の欠陥だらけの体制に原因がある。

アメリカでベストセラーになった、Freakonomics(邦訳「ヤバい経済学」)という本で、経済学者のスティーブン・レビットは、以下のように述べている。

本書は番付表に残れるかどうかが力士の将来にとってきわめて重要であることに注目する。そこには八百長をしても勝ちたい動機が確実にある。でも、それをどうやって調べようか? 著者はそこで、相撲の番付表から落ちかかっている力士と、そうでない力士との勝負を統計的に調べた。すると、同じ力士を相手にしていても、番付表に残れるかどうかを決める取組でだけ、異様に白星の率が高まる!
それだけなら、番付に残ろうとした力士が必死になって火事場のクソ力を発揮したのかもしれない。でもおもしろいことに、かれらが番付に残った後で同じ力士と対戦すると、今度は異様に負けが多くなる。さらにマスコミで八百長疑惑が取りざたされると、突然勝負はいつもの平均値に戻る。明らかに通常とはちがう工作が行われているわけだ。(山形浩生氏の書評より抜粋

要するに、番付けシステムそのものが、力士間の勝敗取引を促進しているのだ。八百長した方がしないよりも得する仕組みに全く手をつけず、証拠を突き出されたら、今度は力士個人に責任を押し付ける。
「これまでの問題とは質が違う。一部の人間の行為で何百人が迷惑を被っているのか。それを考えると、協会から追放するしかない」とある理事は憤った。(スポーツ報知)
NFLや日本サッカー協会のようなスポーツ組織の存在意義は、ズルや八百長をしたら損をするような仕組みを整えることにある。メジャーリーグがドーピングを黙認してきたように、日本相撲協会は、大事な役割をなおざりにしてきた。

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2011年2月2日

小規模メディアの葛藤

オフィスの留守番電話に、記事への苦情と編集長からの怒りのメッセージをいただき、ちょっと気が滅入った。

記者の仕事に苦情はつきもの。そのほとんどは読者の誤解や偏見の混じった意見なんだけど、時々こっちのミスじゃないかと思わせるような指摘があると、慣れてきたはずの今でも考え込んじゃう。

ジャーナリストの第一の使命は真実を伝えること。信頼されるためには、とにかく情報を正しく伝える必要がある。当たり前のことなんだけど、これがとても難しい。その思いは、むしろ経験を積みにつれて強くなってきている。公文書やデータが揃っているならまだしも、又聞きの話や噂はもちろんのこと、たとえ当事者の発言であってもそれが事実だとは限らない。

うちのような小さい日刊新聞だと、各記者が一日に二つか三つ以上の記事を書かなくちゃならない。予算の削減で、事実チェックを専門に行う校正担当もいなくなり、記事の内容を細かくチェックする余裕なんて正直いってない。それでも毎日、新聞は発行される。

言いたくはないけど、こうした状況で、自分の記事に100パーセントの自信を持つのは難しい。

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2011年2月1日

住宅バブル崩壊の縮図

今朝はビクタービルにケーブルニュース局MSNBCが取材にやってきた。リーマンショックの原因となった米国住宅バブル崩壊の縮図として、ハイデザートを取り上げたのだ。ボクは見逃したけど、お昼に放送された番組で、ボクの書いた記事のデータが使われたらしい。


最近、別の新聞に移ってしまった記者デーブの代わりに、ビジネスも担当するようになった。最初は不動産など全く興味がなかったけど、専門家と話すうちに、住宅問題とハイデザートは切り離せないことが分かった。

投機いわばマネーゲームによって異常なまでに高騰した米国の住宅価格は、2006年あたりピークに達した。穏やかな気候と広大な土地に恵まれたカリフォルニアやネバダ、アリゾナといった南西部の州は、特に急激な成長を遂げた。

ロサンゼルス都市部や海岸部の土地が高くなりすぎて住めなくなった人たちは、徐々に郊外へと移動。サンバーナディーノ郡には次々と新興住宅地が開発された。荒地だった場所が、わずか数年で大規模な住宅街やショッピングモールに変わっていった。

その勢いはサンガブリエル山脈を越えてモハビ砂漠へ。サブプライムローンという、通常の住宅ローン審査にはとても通らないような信用の低い人々に貸し出されたローンのおかげで、ほぼ誰もが家を買えた。銀行はちゃんとしたチェックをせず、借り手の自己申告した所得でローンを貸し出していたという。

南カリフォルニアで最も住宅価格の安かったハイデザートは、サブプライムローンに頼る低所得者がうじゃうじゃ。ハイデザートの都市は、全米でも有数の人口成長率を誇った。

もちろんそんなことが長続きするわけはない。いったん住宅価格が下がると、借り手は高額のローンを払えなくなった。仕方なく銀行は物件を差し押さえにかかったんで、ハイデザートは家を失った人たちであふれかえっている。

新聞やテレビのニュースで、日本でもしょっちゅう取り上げられる米国住宅バブル崩壊。せっかくアメリカに来る人には、ニューヨークやロサンゼルスのような観光地だけではなく、ハイデザートのような土地を訪れて、この国の本当の姿を実感してほしい。


MSNBCのホームページで、今日の番組が視聴できるようになっていたんで貼り付けておく。

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