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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2015年10月31日

ビジネスパーソンに受けそうな映画「スティーブ・ジョブズ」は80点

日本でも来年2月の公開が決まりましたね、映画「スティーブ・ジョブズ(原題: Steve Jobs)」。




ウォルター・アイザックソンの伝記を参考に、ジョブズが行った三つの製品発表プレゼンテーション前の舞台裏劇を描いています。

ぼくは全米公開となった先週末に観てきました。


ジョブズの醜い面が強調されすぎている、事実と異なるなどと批判もあるようですが、映画としてはよくできています。ジョブズという人間の複雑さを中心に据えたストーリー、演技派で固められた俳優陣は、アカデミー候補作品と言われるだけあります。ジョブズと娘との関係には、ほろりときてしまいました。

脚本のアーロン・ソーキンは、映画「スティーブ・ジョブズ」は写真ではなく絵画なのだと言います。アイザックソンの伝記が、事実やインタビューをそのままに切り取っているのに対し、映画は2時間という限られた時間の中で、ソーキンの目から見たジョブズを主観的に描いている。

ジョブズとアップル社を創設したスティーブ・ウォズニアックは、この映画について次のように語っています。
実際にどういうやりとりがあったかではなく、(キャラクター間の対立が)ドラマチックかつ感情的に生々しく描かれていることで、スティーブ・ジョブズの真の内面や彼と接するのがどんな感じだったのかが伝わってきます。BBCのインタビューより
クリエイティブの世界では、作品に詰め込み過ぎない勇気が必要です。

2年前に公開された、アシュトン・カッチャー主演のジョブズ映画は、短い時間に色々と詰め込もうとしすぎてとりとめがありません。カッチャー演じるジョブズは、複雑というよりは、単なる気分屋。下の予告編で流れるドラマチックなナレーションもチープに聞こえてきます。




今回の映画はその点、質が違います。

特にジョブズに興味があるわけでなく、初めは乗り気でなかった奥さんも、映画を観終わったら満足気な表情。「マイ・インターン」よりもずっと高評価で、家に帰ってジョブズの伝記を読んでいました。

「ソーシャル・ネットワーク」でもそうでしたが、ソーキンは人間の普遍的な部分をストーリーの核に持ってきます。「ソーシャル・ネットワーク」はFacebookやテクノロジーが主人公ではない。あくまでコミュニケーションの苦手なマーク・ザッカーバーグという大学生なんです。だからITに興味のない人でも楽しめる。

ただし、ソーキンの作品はスピーディーな会話中心に進められるので、英語の苦手な人が字幕なしで見るのは厳しいです。アメリカの映画館で観るという人は、ジョブズについて予備知識を入れておくことを勧めます。

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