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米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2010年1月8日

アップルは出版業界、ジャーナリズムを救うのか

2010年1月27日は新時代の幕開けになるかもしれない。

アップル社のメディアイベントで、タブレット型デバイスが発表されると噂されているのだ。タッチ機能付きのカラースクリーンを搭載し、大型iPhoneのようなものだという。

あくまでこんなものになるだろうという予想だが。。。


これまでにも、他社からタブレット型パソコンは発売されてきたが、ニッチな存在にとどまっている。単なるタッチスクリーン付きのパソコンでしかなかったからだ。

しかし噂が本当であれば、アップルのタブレット(名前はiSlateだと言われている)は、クールな薄型パソコンに終わらず、我々の生活やいくつかの業界のあり方を大きく変える可能性を秘めている。アップルがこれまで、MacやiPod、iPhoneでイノベーションを起こしてきたように。

iSlateは携帯電話やパソコンに取って代わる存在ではなく、その間を埋めるものになるだろう。パソコンは机の前に座って情報を調べたり、入力したりするのには問題ない。しかし、バッグに忍ばせて外出先で気軽に取り出して読むという使い方には、現在のノートパソコンは(ネットブックも含めて)向いているとはいない。かさばる上に起動時間がかかるからだ。携帯電話でという人もいるが、画面が小さすぎて長文を読むのは厳しい。人々が新聞や本を手放せない理由はそこにある。

アマゾンが発売しているKindleはそのギャップに目をつけた製品。インターネットを介して書籍や新聞を配信し、「読む」という機能に的を絞った。パソコンとの接続やら起動時間など、煩わしさを一切排除したことがヒットにつながったと言える。

人々が新聞や本を読まなくなったというのは半分ウソで、活字離れが進む一方、インターネットの普及でこれまで以上にボクたちが文字情報に触れる機会は増えている。アマゾンによると、先日、初めて電子書籍の販売数が紙書籍の販売数を超えたという。Kindleの成功は出版業界の新たな可能性を切り開いたのである。

iSlateはKindleの発想を更に進化させ、文字情報にとどまらず、写真や動画、音声をも楽しむことができる総合マルチメディアビューワーになると思われる。情報提供側は、あらゆるメディアを組み合わせた情報パッケージを携帯回線を介して配信し、受け取る側はそれをいつでもどこでも雑誌をめくるような感覚で観る(聴く)ことができる。以下の動画のような、タッチスクリーンならではのレイアウトも生まれてくるだろう。

スポーツ雑誌がタブレットにやってきたら。。。


ジャーナリズムもこれによって大きく恩恵を受けるのではないかと期待される。新聞業界は現在、広告収入と購読者数の減少によって大打撃を受けている。しかしニュースの需要は高まるばかりなので、問題はいかに情報を収入に換えるかである。

iSlateが広まれば、新聞や雑誌に近い感覚で人々がニュースを購読できるようになり、課金方法も月ごとや日ごとだけでなく、記事ごとや細かい時間制限までオプションが広がる。タブレットならではの広告の形が見つかるかもしれない。もちろん新聞社の大きな負担となっている印刷代や材料費もかからない。

ウェブサイトのニュースは常に内容が更新されるため、週や日ごとにパッケージとなっている従来の新聞や雑誌に比べて、時間の文脈を把握しづらい。何月何日はどんな一日だったかと振り返る際、新聞一面のレイアウトを見れば、すぐにイメージすることができるが、インターネット検索ではそれは難しい。その点、iSlateに配信される情報は、時間単位でアーカイブできる上、検索も容易だ。

ニューヨークタイムズ紙が既にiSlateに合わせたビジネスモデルを考えているとも報じられているし、一人のジャーナリストとして、1月27日の発表からは目が離せない。

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