メガネの上から立体視用眼鏡をかけて鑑賞した久々の3D映像は、キャメロン監督が専用に開発したというカメラを使っただけあって、臨場感にあふれていた。まるで実際に衛星パンドラにいるような気分を味わえる。これを経験したらもう2Dには戻れないかもしれない。近くにIMAX映画館があるのに、行かなかったことをちょっと後悔している。CGも現実映像との境目が曖昧になるほどよくできていた。
しかし「アバター」は、ハリウッドならではのお金をかけた演出だけにとどまらない。キャメロン監督が発案から14年以上かけたというだけあって、「アバター」ならではの、現実にはない世界が緻密に構築されている。これは「スターウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」を初めて見たときの衝撃に近い。監督は、作中で使われる異星人の言語を、南カリフォルニア大の言語学者と一緒に開発したという。
アバターとは全く違う世界観ながら、同じくらい楽しめたのが、周防正行監督の「それでもボクはやってない」。「アバター」とは正反対に、現実を徹底的に描き、日本の裁判制度に疑問を投げかけた。
ドラマチックな映像や音楽、演出など全くない映画だが、観ていたら自然と感情移入できてしまう。周防監督が2年に渡る取材で、20もの裁判を200回以上傍聴した結果、普通に暮らしていては知りえない裁判の現実が緻密に描かれている。
映画でも記事でも、徹底した取材と細部へのこだわりが面白いと言われる作品の根底にあることは間違いない。