自己紹介

自分の写真
米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点に、英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。 アメリカの現地新聞社で、政治や経済、司法、スポーツなどあらゆる分野の記事を取材・執筆。 2012年には、住宅バブル崩壊が南カリフォルニア住民に与えた影響を調査した記事で、カリフォルニア新聞経営者協会の経済報道賞を受賞。2017年には、ディズニーや開発業者が行った政治献金を明るみに出した記事で、オレンジ郡記者団協会の調査報道賞を受賞。 大谷翔平の大リーグ移籍後は、米メディアで唯一の日本人番記者を務める。

2009年12月27日

気球夫婦の惨めな結末

コロラド州に住むリチャード・ヒーニと奥さんの真弓さんは、庭でUFOのような形をした銀色の実験用気球を飛ばしていた。気球が地面から浮き始めた時、突如悲鳴が。三人息子のうちの一人、ファルコン君がいないのである。まさか気球の中に?夫婦はパニックに陥る。

通報を受けた当局は、警官の動員はもちろんのこと、飛行機の離発着を制限し、軍事用のヘリコプターまで出動させるという、大捜索を開始した。しかも飛行する気球をテレビ局のクルーがヘリで追跡し、その様子が全米に中継された。

およそ2時間後、約100キロ飛行した気球はようやく着陸。ところがかけつけた捜査員が調べたところ、ファルコン君が見当たらない。飛行中に転落したのではないかと心配されたが、なんと家のガレージの屋根裏で発見されたと報道された。テレビには真弓さんの喜ぶ姿が映し出され、一件落着かと思われた。

が、実は全てがヒーニ夫婦の自作自演だったことが発覚。以前、「Wife Swap(奥さん交換)」というリアリティ番組に家族で出演していたことのあるリチャードと真弓さんは、新しい企画をテレビに提案するが採用されず、お金にも困っていたため、今回の茶番劇を思いつく。

真に迫った演技である

ところが、助けを求める際に、911番(日本の110番)より先に、テレビ局に連絡してまずは怪しまれる。また、事件後に家族そろってテレビ出演したところ、司会者に「どうしてガレージから出てこなかったの」と聞かれた6歳のファルコン君が、「パパたちが、テレビ番組のためだって言ったから」と返答。そしてなんと、その後のテレビ出演でも、精神的ショックからか、ファルコン君は二度もカメラの前で吐いてしまった。





化けの皮がはがれてきた夫婦にカンカンの当局は、捜査を開始。起訴された二人は、裁判所から、リチャード被告に禁固90日、真弓被告に禁固20日が言い渡された。億単位ともいわれる捜査費用の賠償と罰金に加え、今回の事件を用いて収入を得ることも禁止された。メディアに露出し、お金をもうけたいがための売名行為も恥ずかしいが、今回の事件でどれだけ彼らの子供が精神的影響を受けたかを考えると胸が痛む。

名前から分かるように、真弓被告は日本人である。二人はハリウッドの俳優学校で知り合い結婚(いわゆる国際結婚である)。ある報道では、彼らを知る人たちが、お騒がせ夫婦の実態を語った。

記事では、「典型的な」日本人女性がそうであるように、常に夫の言いなりになってきた真弓被告に同情の声が上がっている。

「(リチャード)の言うことが全て。彼女は単なる奴隷よ」とリチャード被告の元ビジネスパートナーは語る。「彼女は本当に友達が必要だった。彼は彼女を隔離して、他の人と近づけないようにしたの。彼女は私に一度聞いてきたことがあるわ。『私たちの生活に何か問題があると思う』って。彼女はアメリカ人女性が夫とこういう暮らしをしているのか、分かっていないようだった」

別の知人は、「これは文化的な問題で、(リチャード)はその知識を利用した。彼はアジア人女性を従属させることができると信じ、またそれを望んだ」と述べた。

前述のリアリティ番組では、「リチャードは全ての時間を研究に費やし、マユミには、料理から掃除まであらゆる家事を、手助けなしでこなすことを求めている」との解説が流れた。リチャードは番組中に、代わりの奥さんとしてやってきた米国人女性に対して、「お前は男にとっての悪夢だ。俺の妻が日本生まれでよかった」と言い放った。

コロラドのテレビ局が仕入れた資料によると、事件当日、警察がかけつけた時、真弓被告の頬と左目に何らかの痕が確認されたというが、ヒーニ夫妻を知る人々は、たとえ二人の間で家庭内暴力があったとしても、驚かないと述べる。

日本人女性がアメリカでモテるという話はよく耳にする。女性の社会進出が進み、自分の意思をストレートに表現するアメリカ人女性を苦手という男性が、エキゾチックでおしとやかなアジア人女性を好むのだろう。しかし、日本人女性が単なる従属的な存在として見られているのだとしたら、それは悲しむべきことである。日本人男性がひょろっとして頼りないというステレオタイプでモテないことのほうが、ずっとましかもしれない。今回のような事件でそうした偏見が更に助長されなければいいのだが。

「リチャードは発案者よ。計画者なのよ。彼が彼女の方を向けは、彼女は共謀する。二人はずっとリアリティ番組の中で暮らしているようなもの。二人の生活はリチャードの思うがままに脚本が書かれているのだから」

このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿